メスガキな君に贈る愛の讃美歌

 -正午過ぎ-ポムの街、宿屋の前のメインストリート-



  「ギム、先程の貴方、凄かったですわッ!」


 「そりゃ、良かった」


 マーガレットがギムへと賛辞を贈る。


 対するギムはどこか疲れた様子で答えた。


 「ギムッ!これからどうしますの?」


 「あぁ、今から街で色々と買った後に国境を超えてマナ王国に行くつもりだ」


 「分かりましたわ。貴方に任せますの」

 

 会話を終えたギムとマーガレットは目的の店へと歩み出した。


 マーガレットはギムの隣を歩き、ギムはそんなマーガレットに歩幅を合わせて歩く。


 2人の後ろ姿はそれはそれはまるで長い時を共に歩んできた夫婦の様であった。






-北門近くの小さい道の前に建つ道具屋の数メートル前の道-

 

 「お、あの店だ。入ろう」


 「分かりましたわ」


ギムとマーガレットは2人で道具屋に入っていく。


 「いらっしゃい。何が欲しい?」


 カウンターに座っている、顔に斜めの傷が入ったヒャッハー顔のモヒカン店主が二人に尋ねる。


 「ああ、治癒ポーションと毒消し薬、それとマッチを3つずつくれ」

 

 「はいよ」


  世紀末モヒカン店主はギムに待っててくれと言い残し店の奥へと入っていく。


  数十分後、カウンターの奥から桃色の髪をツインテールにした少女がやってきた。


 「ふんっあんた達ッ!パパに言われた物を持ってきてあげたわ、ほら、早くお金を出しなさい」


 やってきた少女は傲慢な態度でギムとマーガレットを睨み付け、一瞥した後に支払いを要求した。


 「あ、ああ。分かった。いくらだ?」


 ギムは不思議そうに思いながらも桃色ツインテをした少女に値段を尋ねる。


 「えーっそんな事も分かんないのー?クスクス、もしかしてお金の計算した事ないのー?w 精子からやり直してきたらぁ?よわよわおにーさんっww劣等遺伝子のざーこ♡ざーこ♡」

  

 「なっ!?ですわぁ!?」


 桃色ツインテのメスガキはギムが種付けおじさんだったらキレ散らかして2コマ完堕ちさせていただろう煽り口調でギムを罵り、マーガレットが驚愕する。


 「ああ、ごめんよ。嬢ちゃん。確かに俺はほんとに精子からやり直した方が良いのかもな」


 ギムは瞳にうっすらと涙を浮かべた。

 

 だが、それを直ぐに拭う。


 そして財布から金貨を出し、カウンターにすっと置く。


 「なっ!貰いすぎよ!銅貨90枚で良いのに!」


 桃色髪メスガキが驚きの声を上げる。


 「いや受け取ってくれ。嬢ちゃん、それには理由があってだな、まあ、だが俺は医者じゃ無いから間違ってるかもしれない。一応聞くが君はヨワヨワ病にかかってるだろ?」


 ギムは払い戻しを拒否し、逆に桃色ツインテメスガキに問いかける。


 「な.......な、なんで分かったの...パパ以外誰も知らないのに....」


 桃色ツインテメスガキは驚愕し両手で顔を覆う。


 「口調で分かったんだ。ヨワヨワ病は世間では一度罹ったら二度と治らない不治の病と言われ、死ぬ時は突然、呼吸が停止する。過去の発症者はいつも15歳前後で死んでいる。

 

 何故発症するのかは世間には知られておらず、この病気に掛かる人間は全人口の1%にも満たないはずだ。

 で、俺はその1%未満の病気の患者を見た事がある。」

 

 ギムは淡々と話す。


 「な、なによ!何がいいたいわけ!」


 「ヨワヨワ病は15歳までしか生きられない。で、嬢ちゃんは今何歳だ?」


 「なんであんたに私の歳を言わなきゃなんないのよ………

……わ、分かったわよ。言うわよ。私はもう14歳よ。 

 

 でも、もうあと1ヶ月しか生きられ無いの。


  でも近寄ったら掛かると言われた病を持つ私をパパは拾ってくれた。育ててくれた。だから死ぬまでに少しでも恩を返したいの、沢山商品を売って、稼いで、ベッドに伏せっている妹を、パパの"実の"娘を救いたいの。だからこの話は終わりよ、あんたが同情してくれるお人好しで助かったわ!この金貨はありがたくもらっておく」


 桃色ツインテメスガキはギムの強い目力に屈して正直に話し、そして話を切り上げた桃色ツインテメスガキは瞳にうっすらと涙を浮かべたまま、去ろうとする。


 が





 「まあ、待ってくれ。俺はヨワヨワ病の治し方を知っている。知っているからこそ出会った子を、助けられる子を無視したく無い。から、話をまだ黙って聞いてくれ」


 「え…?」



 ギムは桃色ツインテのメスガキを引き止める。




 「ヨワヨワ病はな、解らせれば治るんだ」


 「....は?何を言ってるの?」


 「言葉の通りだ、この病気は過去に無理矢理頭の奥底に封印したあるパターンの過去の恥ずかしい記憶を無理矢理思い出させれば治る。難病でなければ、ウイルスの感染症でも無い、ただの頭の病気だ。だが、この病気は放置していると間違いなく死ぬタチの悪い物だ。で、1つ質問だ…小さい頃、男の子を罵倒して、その後に何か仕返しをされたりとかはあったかな?」


 ギムは桃色ツインテメスガキに問いかける。


 「あ、あ、ああああッ!」

 

 突如、桃色ツインテメスガキが頭を抑えて発狂し、苦しそうに桃色のツインテールを振りまわす。



 ガタッ


 「な、なんだ?フーレ!?、な、、き、貴様ぁ、私の娘に何をしたぁああああッ!」


 店の奥からフーレの声を聞いて慌ててモヒカン店主が現れた。

 

 「え…?解らせただけだが…」


 ギムは首を傾げる。


 「な、なにぃいい!娘の純潔を奪ったのかぁああ貴様ァアッ!?」


 モヒカン店主は怒り狂い、カウンターの下からヌンチャクを取り出し、ギムを睨みつける。


 「貴様、生きて帰れると思うなよぉ?この大切な店を血で汚す事になるかもしれないが仕方がないことだ」


 モヒカン店主はヌンチャクを交互にブンブンと振り回しギムへと突撃する。


 が、


 「お父さん、待ってくれ。俺はなんもしてねぇ」

 

 ギムはモヒカンの破壊ヌンチャクを文字通り粉々に破壊する


 「誰がお前のお父さんだああああッ??」


 「いや、ちが」


 モヒカン店主が更にキレ出し、ギムが否定しようとするが。


 

 「お父様ッ!その方を嬲るのはおやめくださいっ!私は治りましたのーー!」



 「へ?」



  桃色ツインテメスガキ、否、フーレが突如立ち上がり、素っ頓狂な顔をした父の頬を力一杯殴ったのだった。















_______


黑兔です。


最後までお読み下さりありがとうございました。


今回はこれで終わりです。


次回からまた話が進みます。







 


 





 


 



 

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