2人の誓い

 

 夜がまだ更けない頃、ギムとマーガレットは隣同士で焚き火のそばに居た。



 マーガレットは熱い視線をギムに、いや、主に視線は下半身に向けられていた。



 「で?おめぇさんの名前はなんていうんだよ?」



 ギムが問いかける。



 「あら、そうでしたわね、わたくしとしたことが、まだ自己紹介もしていなかったですわーッ!」


 「良い事?良くお聞きなさいなっ!私の名前はハジ王国で名のあるミシェル公爵家の令嬢、ミシェル・マーガレット…ですわッ!」








 「なんで黙りますのッ?」


 

 マーガレットが驚愕の表情を浮かべて問う。




 「すまんが…俺は名のある貴族様って急に言われてもお前さんに対する評価は変わんねぇぞ…それと、貴族の娘がなんでそんなに距離が近いんだよ。普通野郎の、しかもハゲ散らかしていて顔も対して綺麗じゃ無い俺に対する距離感じゃねぇよな?さっきから「黙りますのよ?」


 女性、しかも美人な同年代であるため、嬉しいのは嬉しいが、人としてやってはいけないラインを常識的に考えて理解しているギムはマーガレットの距離感を否定しようとする。    

 

 が、マーガレットはいつもの腑抜けた口調ではなくどこか有無を言わさない程の凛とした声でギムの言葉を遮る。

 




 「良い事?貴方は私が賊に襲われて、しかも暴行される寸前の所を救ってくださった。

 

 それは変わらない事実ですのよ…しかも貴方のその、その、いやらしい筋肉がいけませんのよッ!


 ふんっわたくしに見せつけて挑発してるのかしらっ!ああ、いけません事、口が勝手に貴方の筋肉に吸いつけと言っているのですわー?おほほ…ちゅぅー…」


 

 マーガレットは最初こそは真面目に話していたが、流石に堪えきれず、早口で変態語を話し始める。

 

 ギムはすっかり毒気を抜かれ、彼女のやる事なす事を終始無言で放置するのであった。 

 

 だが、流石に筋肉にキスするのは汚い為引き剥がしたが。

 

 「あぁ…わたくしの」



 「お前のじゃねえよ……」


 

 呆れて物も言えないギムは目を地面に向けて溜め息を吐く。



 「そうですわね…なら、恋人になりましょう?ホラ、もうあんな事やこんな事をした仲じゃ無いですのッ」



 「どんな事だよ!!!んな事やった事もないわ!」



 マーガレットが突拍子も無い事を言いだし、ギムが慌てて否定する。



 「ふーんですの、貴方はその屈強な躰をもちながら女を屈服させた事もないですのね…ならわたくしが貴方の初めてを奪えるのですわねッ!ふふふ…今夜は付き合って初めての夜ですから、覚悟しなさいましっ!」



 「なんでそんな性に結びつけるんだ…しかも付き合ってねぇよ…」



 マーガレットはとにかくギムの全てを奪い去りたいらしい、色々と、汗も初めての名誉も何もかもが欲しいようだ。

 

 ギムはマーガレットの愛が強くて泣きそうになりながらも呟く。



 「それとわたくしは"お前"、ではなくてマーガレットですわっ!貴方なら特別に愛しのマーガレットと私に呼ぶ権利を差し上げますわ。とくと感謝しなさいましっ!」



 「っつ、そうかよ…俺の事はギムと呼んでくれ、親しい奴も同じギムだがそれで良いなら」



 マーガレットは右手で胸をどんっと叩き、左手でピースして上半身を後ろに仰け反させる。

 

 一方ギムはその謎ポーズを無視する事にし、ツッコミより自分の紹介を優先させた。


 

 「ならわたくしはギムの事を旦那様と呼んで差し上げますわー!」



 「なんか…嬉しいような…恥ずかしいような…そもそも付き合ってないし結婚もしてないんだが…」



 「なら訂正して、私は大好きなギム様っ!と呼んで差し上げますわっ!毎朝と毎晩に耳元で囁いてあげますのよ…ふ~…」



 「あふっっ!???」



 マーガレットはギムに近づき耳元に息を吹きかける。熱い吐息が口元が、唇がプルプルしているのを横目に捉えながらギムはマーガレットから体を離す。



 「もうっ…こんなにアプローチしてるのに…離れるなんて…最低ですわ…」



 マーガレットは指先をもじもじと付き合わせ、意地らしく呟く。



 「分かった、分かったから。で?マーガレットは何しにこの町に来たんだ?」



 ギムは露骨に話題を逸らす。



 「…わたくしは…実のところを言うとこの街の領主に嫁がされる道中でしたの…わたくし、お父様、いえ、公爵にほとんど政略結婚の様な形で"公爵令嬢,,として嫁がされたのですわ…そして願わくば破談になれと思い、馬車の中で祈ってたらあの賊達が来たんですの、うわあああん…いやですわ…わたくしデブ領主の下に行きたく無いですわ…ぐずっ」



 「…すまん…」



 急に泣き出したマーガレットを見たギムは何とも言えずにただ謝る。



 「…領主とギムなら貴方の方が幾億倍良いですわ…」


 「それにわたくしデブの癖に毛根がぎっしりのしかも油ベタベタの伯爵より、筋骨隆々で背が高くて、しかも乙女のように純粋で…それに、あそこのゴニョゴニョ…の貴方の方が好きですの。頭皮なんか関係ないですわ…」


 最後の方は良く聞き取れなかったがマーガレットは自分の事を高く評価してくれているのは如何に女経験0な鈍臭ギムでも分かってしまった。

 

 この見た目の割に優しい心を持つギムは解決策を考えてしまう。


 

 「…なら、一つだけ君の願いを聞こう。もちろん俺のできる範囲の話ではあるが…」



 ゆえに、自分で自分の墓穴を掘ってしまった。

 

 ギムは圧倒的な破壊力によってどんな強大なモンスターでも粉砕できる。

 

 それこそ、古のエンシェントドラゴンや不死の魔王ですら一発で粉砕される。

 


 ギムは自分の力の最大値を知らないが、過去に通りがかりに見かけた物理無効の王級キングクラス幽王アンデットキングを一撃で粉砕できてしまった。

  


  そんなギムのスキルは『圧倒的な力』であり、万物を凌駕する最強で唯一無二のスキルである。

 

 ゆえに直感でどんな物も破壊できると言葉では表せないが、感覚としては理解していた。



 「…なら、貴方に一生守って貰うという願いをお願いしますわ…勿論、わたくし達の子供もですわよ?」



 あの泣き顔は嘘だったかのように意地悪な笑みを浮かべて問いかけるマーガレットにギムは答える


 

 「う…分かった…君を一生守ると誓おう」



 「約束ですわよ?」


 


 ギムとしては、自分のお金を渡して彼女のお金とし、この国から逃げて貰う方を想定していた。まさかのギムと一生共に居る宣言をされてしまうと男としてはめっぽう弱い。






 「沈黙は肯定と見做しますわ。てことでわたくしはあなたと今からまぐわいますわっ!貴方の色のない人生に敗北の2文字を刻んで差し上げますの!」



 にこぉという吹き出しが見えそうなくらいに怪しげに笑う彼女であった。




 「色って真っピンクじゃぁないだろうな?…」



 「それは今から教えて差し上げますの。それじゃあいっただきまーす!ですわぁ!」









数刻後…



「おほおぉ…」



 ギムは失神しながら口と下半身についたあなから絶えず液体を垂れ流す彼女を見て想う。

 


  


 あれ?なんか俺、急に体力ついた?




 と












 彼 ギムのスキルは二つある。



 一つ目は言わずもがな、『圧倒的な力』



 そして二つ目は…『絶倫』


 

 強者のみが許される女の略奪を決してやってこなかった強き青年は、今宵初めて女とまぐわった事によって、新たな力の片鱗を感じ取るのであった。









 後の世で『絶倫傭兵』『ハーレム野郎』

と声高々に言われてしまう。そんなスキルであった。









_______


ども!黑兔です!


遂にギムは真夏の夜の熱きpvpを経験しました。(パンカパーンッッ!)


書いてる途中にあれ?なんでこんなに早く初対面の男を好きになるの?と思い、彼女にとある性癖を追加しました。


その性癖とは筋肉フェチです。


彼女は筋肉を愛してしまったがために、ギムの最高の筋肉に惚れてしまいました。


初めてがギムだから良かったのですが、モノー伯爵のとこに行ってしまった場合はかなりバッドな結末になっていました。


筋肉が好きなので、筋肉が良ければ直ぐに交わるヤバい女ではあります。


ただ、主人公と出逢ったが為に、もう他の筋肉には目映りしなくなりました。主人公LOVEです。












『フェチ、それは-滲み出す瘴気~不遜なる狂気の器-である』 故フェチ・ズム・スキー
















 




 



 




 

 



 

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