涼風凪の独白
自分で言うのもなんだけど、僕は周りの人から、同級生だけでなく大人からも好かれる性格だと思う。
本当に自慢とかじゃないんだけど、ここだけには自信があるんだよね。
っていうより、そうでないと困る。
そうやって振る舞わないと、また1人になってしまうのが、怖い……からね。
──別に誰かからいじめられていたわけでもないあの生活。
でも、その時の僕は学校での休み時間は、自習と読書しかしてなかった。
始めの頃は別に気にしてなかった。だけど、1、2年が経つとその事実を実感しだしたんだよね。
寂しい、悲しい……怖い。そんな、事実を。
そうなってしまうような感覚を、一条さんから感じてしまったんだ。
だから、心配して声をかけたんだ。
でも、一条さんは違った。
あの人は自分から選んで、あの道に立ったんだ。
僕が明るく振る舞うように、あの人は大人しく振る舞っている。本人から聞いたわけじゃないから、絶対にそうとは言えないけど、同じ境遇の僕には分かる。
僕は、今の僕の方が楽しいけど、はたして彼女は今の方がいいのだろうか。
違った。
関わり始めて、すぐに気づいた。
彼女は、その大人しい性格に慣れているように、ううん、まるで慣れているかのように自分を騙している。自己暗示のようなもの、なのかな。
それを、そのまま見過ごすなんて、できない!
でも、僕を突き動かしているのは、それだけじゃなくなった。
おそらく彼女は人とのトラブルを起こさないために、心を閉じている。その中でも感じる、さりげない優しさ。
今の彼女は、まるで優しい光を内側に包んだ、氷であった。
彼女にありのままの姿でいて欲しいと思って関わっているのに、何故か僕が彼女に笑顔にさせられる。
彼女と一緒に話すのが、いや、いっしょににいるだけで楽しいし、幸せなんだ。
うん、やっぱりそうだ。
たぶん、僕は一条さんが好き、なんだと思う。
同じ境遇の人であり、好きな人。
──僕は、そんな愛おしい氷を溶かす、光になりたい。
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