悲鳴

仕事が終わり、職場から駅へと歩いている。時間は20時を過ぎており、さらに道には街灯が少なく、辺りはかなり暗かった。

その時どこかから悲鳴が聞こえてきた。その悲鳴は、まるで殺されそうになっているかのような悲鳴だった。

「ぎゃああああああ!うわああああああ!」

これはただ事ではないと思い、悲鳴の聞こえる方へと近づいていった。

しばらく歩いていると、少し離れたところに人影を見つけた。悲鳴はあそこから聞こえている。

さらに近づいていくと、次第にその人影がはっきりと見えてきた。

そこでそれがおかしいことに気づいた。

悲鳴が聞こえていることから2人以上人がいると考えていたが、そこにいたのは1人だけだった。40歳くらいの男が塀の近くに立っている。しかも、その人は棒立ちで無表情であった。ただ口だけを動かしており、大きな悲鳴をあげている。

「ぎゃああああああ!うわああああああ!」

この人は何をしているんだろう。

気持ち悪さを感じて、近づくのをやめる。その時、その男が手に何かを持っているのに気づいた。

それはラジカセだった。右手にラジカセを持ち、それを胸の辺りまで持ち上げている。

「ぎゃああああああ!うわああああああ!」

悲鳴はその男の口から聞こえているのではなかった。悲鳴はラジカセから聞こえていた。その男は、ラジカセから再生されている音声に合わせて口パクをしているだけであった。棒立ちで、無表情で、聞こえてくる悲鳴に合わせて口パクをするという意味のわからない行動をするこの男に対して、気味の悪さを感じて逃げ出したい衝動に駆られる。だがうまく体が動かず、その意味不明の行動をする男を見つめ続けていた。


そこで目が覚めた。

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