day26 深夜二時(真夜中の星に願いを)

「……うーん……」


 むくりと、朝恵ともえはベッドから身体を起こした。暑いな、と感じて。

 寝ぼけ眼で、目をこすりながら枕元の目覚まし時計を見てみる。時刻は、丁度深夜二時。


 まだ、二時なんだ――喉が渇いているのに気付いたので、そっと部屋を出て、台所へと向かう。熱中症にならないように水を一口飲んで、渇きがすっきりしたので再びそろそろと歩いて、自分の部屋に戻った。


 ベッドに入って、もう一度眠り直そうと思ったが、なかなか眠気は訪れない。

 どうしよう。明日も朝は早いのに。


 起き上がると、ベッドの端に腰掛けた。電気をつけて、本を読んではいけないだろうか――そう考えたときだった。外に、星が流れたのは。


「――ながれぼし?」


 朝恵は立ち上がると、カーテンを閉め忘れていた窓の方へと駆け寄った。


「わあ、きれい……」


 空を見上げると、そこには満点の星空があった。たくさんの星が、きらきらと輝いている。明るい星、少し暗い星。白っぽい星に、少し赤い星――それぞれの輝きを持って、光っている。


 射手座はどれかな。今の時期の星座だと教えてもらったが。だが、どの星が射手座なのか朝恵にはわからない。――今度、星座の本を図書館で借りてこよう。自分の星座が見てみたいから。また借りる本が増えたと思いながら、朝恵は一心に空を見上げ続ける。星空は美しく、どれだけ眺めていても飽きることは無かった。


 じっと星空を見上げ続けていたら、すうっと流れるものが、今度ははっきりと見えた。――流れ星だ。

 お願いしたい事を、三回言えば良かったんだっけ――何を願おうかと考えているうちに、流れ星は消えてしまう。


「ねがいごと、いえなかったな……」


 朝恵にも、いろいろとある願い事。あれが欲しいという小さなものから、胸に秘めた大きな願いまで。――でもどの願い事にせよ、流れ星が消えるまでに三回も願うのは、難しそうだ。


 願い事は、今は願い事のままで、いつか自分で叶えた方がいいのかも知れない――そんな風に、朝恵は考えた。流れ星に願う条件が難しいのは、きっと願いは自分で叶えなさいということなのだろうと。


 お願いが出来なくても、流れ星が綺麗なのは事実だ。


「あ、またながれた」


 今日は流れ星が多い日なのかも知れない。

 眠くなるまで、もう少し星空を眺めていよう。朝恵は窓の側に立つと、きらきらとした瞳で空を見上げ続けた。


 この綺麗な星空を、真雅しんがも見ていたらいいな。一緒に並んで見られないのなら、せめて同じ空を共有したいから。

 そんな風に、何故か思った。

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