8.一致団結ハプニング【Day8・雷雨:read i Fine】
「うわああ~、めっちゃ降られた~」
「あかん……ずぶ濡れやん……」
「なんで誰一人として傘持ってきてなかったんだよ……」
事の発端はミーティングついでの食事会でのことだった。
九人組男性アイドルグループ『
が、本社と宿舎の間で道のりにて土砂降られたのである。
現状九人全員、濡れネズミである。そして玄関に立ち往生中だ。
「はあ、しゃあない。明日朝早い奴誰やった?」
声を上げたのはリーダーの
「同じ仕事なん?」
「ううん~、でも出る時間一緒だよ。八時入りだよね、あきさま」
「うん。八時入り、さっさと寝たい」
「分かったわ、じゃあふたり、真っ直ぐ風呂場行きな。なるべく長く入っとって、着替えは持ってくから」
「わかった~」
「よろしくね」
そう言って水面と亜樹はずぶ濡れのまま風呂場へ向かう。さて、これで七人。更に月島は声を上げる。
「いっちゃんとえいちゃん、先にランドリールーム行って服脱いで、タオルと雑巾持ってきてくれへん?」
「いいけど、裸で?」
「ズボンと靴下さえ脱いでくれれば」
「ああなるほどね、僕はおっけー。えいちゃんは?」
「俺はパンツだけでもいいけど、大変見苦しいですが」
「見慣れてるからいいよ、もう」
むしろ若干うんざり、という風に返したのは最年長で双子の兄の方・
「じゃ、よろしく。で、あとのメンバーはタオル来るまで待機な!」
「えー、風邪引いちゃいますよー」
「そんなすぐには引かないと思うよ」
「透はそこそこ馬鹿だから大丈夫でしょ」
「ゆうくん! ライン越えてます!!!」
ロシア人とのクォーターな
「ただでさえびっちゃびちゃなのに、暴れたらよりびちゃびちゃになるわ!」
「でもこれに関しては私悪くないです。ゆうくんがずっと悪い」
「ごめんね太一、これに関しては俺が悪いってことにしておいて」
「そういう言い方が透を怒らせるんだよ……?」
憂慮している森富だが、早速二ラウンド目が開始しそうになっている高梁であった。
若い子は元気だなあ、と日出が高身長トリオを見上げつつ見守る。そうしているとやっとタオルを持って
「ちゅっ、見苦しくてごーめーん」
「いっちゃんもえいちゃんも見苦しくないよ! ナイス筋肉!」
「太一の琴線が未だに謎。あ、いっちゃん、頭拭いて」
「ええ……自分でやりなよ……」
と言いつつも南方の頭を拭いてあげる御堂である。ちなみに御堂と桐生だが、流石にパンイチということはないが下はパンツだけ。上は、御堂の場合は辛うじて浸水をまぬかれたインナーのタンクトップ、桐生は重ね着をしていたおかげで無事だったTシャツという出で立ちだ。
「やっと家に上がれる……」
「各々足拭いてから上がるんやで。上がったらランドリールーム行って服脱いで来い、オレはちょっと亜樹とみなもんの服取ってくるわ」
「あの子たち、のぼせてそうですもんね。ね、日出くん」
「うん、……ごめん透、今日はちょっとこっち見ないでもらって」
「え⁉」
高梁から話を振られた日出だが、昼間に何故か高梁よりでこちゅーをされたことを思い出し、ミーティング中も彼の顔を上手く見れなかったのだ。
「透がのでさんから嫌われてる?」
「嫌われてないですう! ゆうくんの意地悪! 嫌いになってないですよね⁉」
「太一、背中に俺を隠して」
「露骨すぎない? なんで?」
「え、私なんかしましたか……?」
「あれでしてない、っていうのは無理があるだろお前……」
本格的に自分が何をやったか思い出せない顔をしている高梁、昼間のことを思い出し更に顔が険しくなる日出、間に立っている南方と森富はきょとんとしていた。
そんななかでようやく風呂から帰還してきた水面と土屋は、その様子を見て更なるきょとん顔を披露している。
「どうしたの~、お兄ちゃん、般若みたいになってるよ~」
「水面……、『般若』って『にゃ』ってつくのに全然猫っぽくないよね……」
「そんな険しい顔して言うようなことじゃないよ⁉」
「あきくん……、私、日出くんに嫌われちゃいましたかー……?」
「風呂上がりで訊かれても何も分かんない。あ、次はいっちゃんとえいちゃんが風呂入ったから」
「あーい」
結局、昼間のことは高梁に直接言えず、少し溝を深めた日出。そんな日出から珍しく甘えられ、少し嬉しい水面。日出が何に引っ掛かっているのか分からない高梁。この三名で宿舎は混迷を極めたのである。もちろん、翌日になれば雰囲気は元通り、なのだが。
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