第2話 小日向真司1歳

真司は寝返りが打てるようになった。

この頃は、現代と違って使い捨ての紙おむつなどなかった。

真司がウンチをするたびに、布のおむつを洗っては乾かし、洗っては乾かす。

子育て以外の家事は、真司が生まれる前と何ら変わらない。

それに真司のお守りが加算された。

一体何回洗濯をし続けなければならいのだろうか。

文枝は気が遠くなる思いがした。


誠司は真司の夜泣きに悩まされた。

朝は6時に起きて出勤し、夜は遅くまで残業する。

アパートには寝るために帰るような生活だった。

少しでも睡眠時間を確保したいのだが、真司の夜泣きで叩き起こされる。

誠司のイライラは少しずつ溜まっていった。


ある日曜日のことだった。

布団で昼寝をしているはずの真司がいない。

誠司は辺りを見回すと、タンスの角を頼りに真司が立ち上がっていた。

台所からやって来た文枝も真司のその姿を目の当たりにした。

二人は抱き合って喜んだ。

この一瞬で誠司と文枝のイライラは吹き飛ばされた。

親も子に育てられるというが、そんなものなのだろう。

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