第3話 小日向真司2歳
ようやく片言だが真司は言葉を覚えてきた。
最初に話した単語は「おちゃ」だった。
この頃から文枝は母乳を卒業させて、お茶を飲んでいた。
文枝が「お茶を沸かさないと~」、「真司、お茶を飲みなさい」と毎日のように連呼していたから、自然とその言葉を覚えてしまったのだろう。
何を最初に話してくれるのだろうかと期待していた誠司と文枝は、さすがに感動が薄まってしまった。
日曜日になると三人でよく散歩に出かけた。
この当時は自家用車を持っているのは一部の金持ちだけで、一般家庭には高嶺の花だった。
ちなみに誠司の通勤も、文枝の買い物も自転車が活躍していた。
だから遠出することはめったになかった。
歩いて出掛ける先は、もっぱら近所の公園や河川敷。
よちよち歩きの真司の右手を誠司が、左手を文枝が握って三人は並んで歩いた。
それでも三人は幸せだった。
真司は代わる代わる誠司と文枝の顔を見上げた。
見つめ返してくる両親の顔は満面の笑顔だった。
この頃からだろうか。
真司が両親を笑顔にすることが、自分の使命のように思い出したのは・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます