第11話
こうなったら、久しぶりに電子書籍でも購入してそれを読みあさっていようか。スマホで読むのであれば、左手一つあれば読めてしまうからありだ。いっそのこと、小説をいくつか購入するのもありだ。気になっている作品はあるから、一気に5作品ぐらい時購入しよう。
2週間の休日初日。
事前に予定していた購入した小説を一日中読んでいた。椅子に座ったり布団の上で横になったり、時々立ち上がって壁にもたれて読んでいた。
2週間の休日2日目。
1作品を読み終えて2作品目に突入していた。昨日と同じように、いろいろな体勢で電子書籍を読んでいた。
2週間の休日3日目。
3作品目は短編集だって、昨日時点で半分近く読んでしまっていて、お昼頃から4作品目を読んでいた。
2週間の休日4日目。
小説を読むことに飽きて、テレビを見ていた。バラエティからアニメまで時間を潰すにはもってこいだった。
2週間の休日5日目。
テレビばかり見ていると体が怠けると思い、昼から散歩に出かけた。そこまで広い市ではないけど、車だと行きづらかったり、そもそも行く用事がないようなところに行った。
昭和後期の密集した商店街の面影のある場所。もうシャッター街になっていたことは知っていたが、そんなかでも生き残っている店があることは知らなかった。私が住んでいる街の名産品。竹ちくわとフィッシュカツ。練り物製品を営んでいる店が唯一残っていた。
物珍しさに入ろうかと悩んだ。季節は冬にかけていたから、多少の時間は外でいても大丈夫だろうけど、私は今徒歩だ。歩いて帰ったら腐るかもしれない。真夏に一度、違う店でフィッシュカツを買って車で帰って、帰ってからは冷蔵庫に入れていたにも関わらず、次の日食べようとしたら真っ黒になっていたことがあった。同じ過ちを繰り返すわけにはいかない。今回は見送らせてもろおう。竹ちくわなら食べながら帰ることはできるけど、私はちくわが苦手だから、買うことはできない。仕方ない。でも、どうしても口が寂しくなって、普段からよく行っているベーグルを売っているパン屋さんに足を運んだ。ここのベーグルを食べると他の店のベーグルは食べれない。美味し過ぎてとかそんな話ではない。もちろん美味しいベーグルではあるが、なんと言っても小麦粉とは思えない腹持ちの良さが特徴だ。初めて食べた時は衝撃だった。一つあたりは200円と少しとパン屋にしては高めの設定であるが(当時は2022年です。)、一つでここまで腹が膨れるのなら、お買い得すぎると思ったほどだ。これを機に、ベーグルが売っている時にはスーパーから直売所まで至る所で買ったが、どこもパンという言葉で表すのが正しい気がして、もう一度買おうとはならなかった。
ベーグルを5つほど買って帰ってみると、歩数は1万2000歩を裕に超えていた。歩き出してから3時間以上も歩いていたから当然か。
最近のスマホは便利だ。ズボンのポケットにスマホを入れていると、歩数を測ってくれて、その歩数から消費したカロリーの概算を導き出してくれている。
人間が1キロを痩せるのに必要な消費カロリーは、約7000キロカロリーと言われている。私が今日一日歩いて消費したカロリーは546キロカロリー。1キロ痩せるには程遠い数字だった。まあ、そんな簡単に痩せることができるのであれば、肥満なんて言葉が世の中にあるわけがないよな。
体重計に乗ってみると、意外と体重は落ちていた。昨日に比べて1キロ程度。喜べる数字ではないけど、胃に食物を入れた状態でこの体重ってことは、確実に痩せているってことだ。
この日から1日ですることを決めた。
まず、朝起きて、とりあえずアニメやドラマを見て時間を潰す。昼ごはんを挟んで、昼からは2時間くらいゲームか小説を読む。そして15時くらいから散歩に出かける。晴れた日はこれを毎日実践して過ごした。暇つぶしもできたし、右手を使うことが減って、痺れる頻度は減っていた。
回復に向かっているそう思っていた。だが、回復していたのは一時的の期間だけであった。
仕事が始まる前に市民病院に受診をして、握力の再測定を行うと、握力は倍になっていた。そもそもが低い値だったから、倍になったところで16キロではあったけど、仕事を休んだ効果はあった。感覚的にも痺れが減って、手が動かしやすくなった。
医者も回復傾向にあると、悠々に語っていた。
この医者の言葉で調子に乗ってしまったと言えばそうなのかもしれない。
いざ仕事が始まると、今ままで庇ってきた右手を所々で使って、痛くなれば左手だけにして、そんな生活を繰り返していた。
2週間経って、受診で市民病院を訪れると、握力はまた下がっていた。
「11キロ。うーん。また下がっているね」
問題は治療方針ではない。間違いなく私のミスだ。仕事を休む前はあれだけ左手生活をしていたのに、使えるようになって、普通に使ってしまっていた。これからはもう一度左手生活を繰り返そうか。そして、この年で左利きデビューを果たす。
新たな目標を掲げ、左手の人生を歩もうと決意した。
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