第30話 色相

『吾輩は猫である。名前は3つある。』


「あれ、とらちゃんどうしたの?お洋服変えた?」

 何を言っているのだろうか。吾輩の毛皮は一つきり。変えるだなんてとんでもない。暑さでおかしくなったのだろうか?

「……おかしいな。他のも色がみえないや。あたしがどうかしちゃったのか……な……」

 全速力で下に降りて、あの子の母親を呼びに行く。勘が良いのか、『声』に出さずともすぐに様子を見に来てくれた。そのままバタバタしているうちに、家には誰も居なくなった……

 吾輩が『にゃん』と泣いても誰も答えてくれないし、良くない記憶ばかりが思い出される。考えすぎの頭を冷やそうと、そのまま家を抜け出した。……今日も外は暑かった。

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