第29話 焦がす

『吾輩は猫である。名前は3つある。』


「もうお姉さんだから目玉焼きぐらい自分で作れるようになりたい」

 ついこの前そんな話をしていた。それ以来、香ばしい匂いが漂ってきては吾輩の分かと期待している。しかし、声をかけるのを躊躇うほどにしょんぼりした顔しか見えなかったし、食べさせてもらえたこともなかった。今日までは。

「できた!」

 そう嬉しそうな声に振り向くと、満面の笑み。飛び上がって出来栄えを見てみたい気持ちをぐっと堪えて、大人しく下で待つ。ただ、今度こそ食べられると思って、期待を込めて『にゃん』と催促はした。

 ……お皿に移すのを失敗したからあげる、としょんぼりした顔で言われたが、美味しいよ?

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