第28話 ヘッドフォン

『吾輩は猫である。名前はある。』


 何やら大きな耳を耳につけている。何を言っているか吾輩もわからないが、そうとしか見えない。気になったので、近づいて触っていると

「イヤホンは大きくて私の耳に入らなかったから、お父さんのおっきいのを借りてきたの。どうカッコいいでしょ?あ、爪を立てちゃダメだからね」

そんなことを言われた。なにやら音が流れているようだが、吾輩が気にいるようなものではなさそうだ。よくみると、細長く伸びている紐があるな。そっちの方が気になる。爪を立てなければ良いと言われていたので、まずは少し舐めてみる。……やっぱり美味しくないので、牙を立てるのはやめておいた。

「あ!かじってもダメよ、とらちゃん。美味しくないでしょ?」

 その通りだ『にゃん』と、返事した。

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