第24話 朝凪

『吾輩は猫である。名前は3つある。』


 まだ誰も起きていない時間帯。冷房の効いた部屋を抜け出し、そのまま家も抜け出してみる。まだ日が昇っていないというのに、思っていた以上に暑い。夏とはいえ、どこかで風ぐらいはあるだろうと、涼しげな風を求めてさまよってみる。が、ひげすらピクリとも動かない。さらなるそよ風を求め、木に登ったり、少し高い丘に向かったり。それでもまったく風のない朝。朝から暑い日だというのに、風を見つけられずに落胆しながら家に戻る。

 「あ、とらちゃん、みーつけた。お出かけしてたの?」

 ちょうどのタイミングで開かれた扉にヒゲが動く。ほんのわずかな風だけど、それが心地よくて嬉しくて、思わず『にゃん』と返事した。

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