第22話 雨女
『吾輩は猫である。名前は3つある。』
バルコニー越しに土砂降りを見ている。以前のように雷はないが、それでも屋根がなければ戸惑うほどの雨量だ。
「まぁた、雨だぁ……うちのお母さんが雨女だからかなぁ。そうそう、おばあちゃんから聞いたけど、ご先祖さまは雪女なんだって。夏でも雪降らせてくれるのかな?とらちゃんはどう?ちなみにあたしは晴れ女よ!」
そんな声が聞こえてきたが、相手にする気にはなれない。雪が積もった昔の庭の木を思い出したせいだろう。しっぽを振ることで返事の代わりにする。
「もう、聞こえてるのは知ってるんだからね。雨でキゲンが悪いのはあたしも同じなんだから」
どうやら退屈なだけらしい。おしゃべり相手になる気分じゃないと、またしっぽをフリフリ。すると掴もうと手を動かしだしたので、慌てて逃げる。それが楽しいのか追いかけられる。部屋の中でドタバタすると怒られるのは目に見えているけど、大人しく捕まってやる理由はない。
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