第18話 蚊取り線香

『私は猫である。名前は3つある。』


 煙を追いかける。まだ捕まえられないが、次は行けそうな気がする。そう思いながらわずかばかりの時間、格闘している。その合間に何匹か虫をはたき落とした気もするが気のせいだろう。なぜか私の周りに集まってくるので、実にうっとうしかった。

「そなたはいったい何時間そうやっているつもりじゃ?まさか煙の香りではなく、それに釣られた猫が物理的に蚊を仕留めるとはな。流石の吾輩も想像していなかったぞ。聞こえておるのか、タイガー?」

 とんがり帽子が何かつぶやいている気はするが、私の耳には入らない。虫のように邪魔はしないでほしい。私はこの煙の相手でちょっと忙しい。

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