第3話 飛ぶ

『僕は猫である。名前は3つある。』


 木の上に獲物を見つけた。毎日の食事で蛋白質の補給はできているけど、このところ運動不足だったのでちょうど良い。まずは音を立てないように、すばやくでも静かに木の下まで移動する。上の獲物を目視。大丈夫、まだ居る。次は幹に手をかけて、そろりそろりと登る。少し伸びた爪のかかり具合もいい感じだ。気づけれないまま獲物が居る目標の枝まで辿り着いた。まさに飛びかかろうとした、その瞬間

 「寅三郎、どこにいるの?」

……逃げた獲物の羽ばたきに負けないように、僕は大きな声で『にゃん』と鳴いた。

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