第3話 革命神器ヴィクトリア 中編
メィリーン王国。
この国の国民の先祖達は皆弱者扱いを受け、虐げられていた。
革命天使ディー達に先祖が救われた事から、毎年青羽根祭りという行事が開催される。
「わぁ…青羽根祭りかぁ…これってディー達の事だよね?百年前の事なのに皆覚えてくれてるんだね」
「当たり前よ弱者扱いされている人達を救えるのはディーしかいなかったんだもの」
「ディーだけの成果じゃないよ…えへへ…」
「ねぇねぇおねぇさんたちたびびとさん?」
「あれ…この子って…」
ディーの発言を唇に指を当て止めディーの耳元で囁く。
(今はまだ秘密にして置きましょう?)
「えぇ、私達旅をしているの、人探しをしてるんだけど…」
カナリアが気づくのはもう少し先である。
記念式典の前日1月8日
「全世界弱者根絶計画は順調ですか?」
「完璧に決まってるだろ?マティエルさまぁ!」
「これが各国の技術を結集して作り上げた弱者操作式制裁兵器ストロンガーだよ。ほらポチ、おいで?」
「ズベベベベベベベベベ!!グハァ!!」
むしゃごきぐちゅぬぷり
「おー偉い偉い」
「なんとおぞましい…血まみれの怪物と化した弱者が弱者を切り裂いて食べるなんて…彼らに対する罰として理想的ではありませんか!設計図を見た時は、まさかこんなものが作れるなんて思ってもいませんでした」
「えっへん、もっと褒めていいよポチ達にいっぱい実験したんだ!」
「アマルシアにない技術だけど面白い技術だからって友達と調べてたんだよ。趣味のつもりだったから役に立つとは思ってもみなかったぜ!」
「アマルシアとの友好国家へストロンガーを配備したいとの事でしたがアテルゼム王国とニーベル帝国が完成し次第送って欲しいとの事です。成果さえ出せれば、希望国家は爆増されると予測します」
「これでやっと世界中の弱者共をぐちゃぐちゃにできるんだな!わくわくしてきたぜ!十年前の虐殺に紛れて逃げたクズだって絶対殺せるはずだぜ」
「逃げて改善の機会を無くすなんて悪い子だねぇ…ポチ達みたいにお利口さんにしてあげようね…」
「モニカ達…まさしく言う通りです。この十年無能なだけの弱者を罰しても私の心は満たされませんでした。愛しい我が子への虐殺を利用して逃げ延びた弱者達が平然と生きているからです。ですが、ようやく…ようやく彼らを罰する準備が整いました、記念式典でストロンガーを披露と実演…そして各国へ配布する事を伝えます。もうじき弱者に支配されたこの世界が在るべき姿を取り戻すのです。ですから不穏因子の対策は徹底してください。弱者の悪意には底がないのです。逆ギレした弱者による被害は十年前で最後にしたいのです」
「お言葉だけどよぉ…あたしは記念式典で敢えて切れさせて口割らせた方がいいかなーって思ってたんだよ。そしたら仲間の場所とか聞けて根絶できるかもしんねぇ。まぁマティエル様の決定に従うけどさぁ」
「ねぇターシュ、だったら自分で一番怪しい人見張ったら?マティエル様は他力本願が嫌いなんだし」
「貴方程の天使なら確認されている不穏因子の力くらいなら必ず鎮圧できるでしょう。貴方に任せますが、誰を見張るのですか?」
「あたしとしてはグレーなやつこそ怪しいと思うんだよ、あいつだよあいつ、ディー」
「弱者程じゃないけど仕事遅いし言い訳もして半分くらいは改善できない…何か別の事やってんじゃねぇかな?」
「確かに怪しいね、弱者程じゃないけどどんくさいよね」
「ターシュ…恐らく貴方の予想は正しいのでしょう…ですが気をつけてください。弱者は嫌がらせの為に実力を隠す事も多いのですから」
「任せてくれよ!弱者如きに負けるあたしじゃねぇからな!」
1月9日記念式典当日
ディーの弱者との関与を暴いたもののターシュの首は理不尽にもレパードによって切り落とされてしまった。
「ターシュ様…!?」
「嘘…嘘よこんなの!?」
「嫌ああああああああああああああ!!人殺しいいいいいいい!!」
ターシュが殺された事で狼狽える民衆
「まったく…何人殺したか覚えてないのかしら?」
「あ、あの…」
「どうしたの?ディー」
「この後どうするの…?ディーは仲間の無事を確認したいけど…」
「貴方に従うわ、一旦退避しましょう」
「逃げられると思っているのか?この人数を相手に…お前らは殺される運命なんだよ。 一斉攻撃、始め!」
「無駄よ」
レパードの剣が紫色に光ったかと思うと横薙ぎを放った。
「あ?」
「ぐあああああ!」
「ひぇ!?」
それだけで殺意を持った天使兵の集団の首が落ちる。
「怯むな!所詮戦闘員1人と無能1人だけなんだぞ!この程度で殺される事は恥だと思え!」
「だったら貴方って相当恥ずかしい子よ?」
ザクザクッ
「え?腕が!?腕がぁ!?貴様こんな事をしてタダで「済むと思ってるわよ、大体貴方達弱者処刑と称して何人殺してきたの?何人も殺したんだから文句言わないで頂戴?」
「しにたぼえぇ!?」
心臓を突き刺して止めを刺した。
「そろそろチャンスかしら?ねぇディー…貴方空飛べる?」
「ちょっとだけなら…人を抱えて飛んだ事ないから失敗したらごめんね?」
「貴方ならきっとできるわ」
バサバサっ
ディーはレパードを抱え飛び立つ。
(ただ飛んで逃げただけじゃすぐに追手がきちゃう…行方を眩ませないと…)
そこに急速で現れたのは…
「ディーちゃん!助けに来たよ!」
式典には来ていなかったはずのメリールだった。
「メリールちゃん!?」
「話は後だよ…一瞬だけ目を瞑っててね?神器解放!」
メリールは持っていた杖型の神器を眩しく輝かせる。
杖から放たれた光は邪悪な存在にのみ苦しませ、悪人だらけのこの場を切り抜けるには十分な隙が生まれた。
「ぐああああああ!?何をした貴様ぁ!?」
「前が!前がぁ!?」
「二人共、今の内だよ!」
「ありがとう!」
「待…ちな…さい…侵入者…侵入者ぁ!!人殺しの癖に…人殺しの…分際でぇ…!!」
「はぁ…はぁ…侵入者共の姿が見えません!?どうやら逃げられたようです!」
「この愚か者!今この瞬間だけでも何人死んだと思っているのですか!?彼らの為にも決して取り逃していい相手では……すいません私も同罪のはずです。取り乱しました」
「なんで…ターシュちゃんが殺されなきゃだめなの!?死ぬべきなのは弱者の方なのに!?」
「許させないよこんなの!?全員ポチの餌にしてやる!」
「騎士達も半数が殺されてしまいました…彼らはなんの罪もおかしていないというのに…よくも…」
「あんの…クソ弱者共ぉぉぉ!!!」
「酷い…この国に弱者以外に死んで良い人間なんている訳ないのに…」
「騎士団長さえ勝てないなら誰ならあのカス共を殺せるんだ!?このままじゃ犠牲が増えるだけじゃないのか!?」
「私達が何をしたって言うの!?逆恨みで殺されるなんて真っ平ごめんだわ!」
「ストロンガーです、ストロンガーで弱者を殺し尽くすのです」
「マティエル様…!」
「彼らは強い被害妄想癖を患っていて弱者ではない真っ当な人間を極悪人か何かと勘違いしているようでした、ならばターゲットは私達アマルシアの人間だけに留まらないはずです。彼らを世界中が危険視するのも時間の問題。隣国に共通の巨悪「弱者」を打ち倒す為の同盟の申請とストロンガーの配備を行いましょう」
「それは明暗です!今すぐにでも手配を行います!」
「できる限り手早く行いなさい。数秒遅れるだけで犠牲が増えると思うように」
「覚悟しなさい…弱者共!今度こそ正義の名の下に根絶やしにして差し上げますからね…!」
なお再戦までの数日でディーが手のつけられない程強くなるとは誰も考えもしなかった。
革命神器ヴィクトリア(元タイトル 無能災害累計死傷者77億人(全員悪人)〜褒められて伸びるタイプの僕は無能を卒業してクズ共を根絶します!〜) yu @yuyu1341
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