第2章
第20話 遠憶懐古
ねえ、強いって、偉いの?
「おや?どうしたんだい、そんなことを言い出すなんて」
隣のスツアーロが言ってきたの。「俺は強いから私より偉い」んだって。
「あの坊主め・・・困ったものだ」
それで、おじいさま。どうなの?偉いの?偉いスツアーロの言うことを、私は聞かなくちゃならないの?
「あのね、ミルシ・・・よくお聞き」
ゴシゴシと、厚い掌でおじいさまは力強く私の頭の撫でる。髪の毛がぐしゃぐしゃになるけれど、私はそれをニコニコと笑って受けることにしていた。
「強いことは悪いことじゃない。それは分かるな?」
はい。強いから、おじいさまは村のみんなを助けられるんですよね?
「ああ、お前が言う通り。儂が狩人として獲物を獲って村の糊口を凌ぐ助けになっているのも、儂が強いからと言えばそうだろう」
えもの?ここう?
コテンと首を傾げる私を見て、おじいさまは「おっと」と目を丸くする。
「お前には、まだ難しかったかな?分かり易く言えば・・・儂が獲った動物をみんなに分けてあげることで、みんなお腹が減ることが少なくなるだろう?」
はい。それ以外にもおじいさまが凄い腕で、がいじゅう?クマさんとかオオカミさんを倒してくれるから、みんな助かってるって、みんなが。
「そうだ。だけどもミルシ。じゃあ、畑で麦を育ててくれているラルフおじさんとか、森から木の実やキノコを採って来てくれるコッパンおばさんは、どうかな?」
ええと・・・ええと・・・おじいさまと同じ、凄い人?
「そうさ。あの人たちは力が強い訳でもないし、凄い腕がある訳でもない。でも、儂と同じくらいみんなの助けになっていて、偉いだろう?」
うん、偉い。それと、向かいのシャランお兄さんは垣根を直してくれたし、奥のガジェロおじいさんは道の凸凹を直してくれたから、みんな凄いし偉い。
「そう。だからミルシ、偉いとか偉くないとかに、力の強さなんて何の関係もないのさ」
ううん・・・じゃ、じゃあおじいさま?
「何だい?」
じゃあ、強さって、なんなんです?
「それは・・・難しいな。ただ、儂はな、ミルシ。力の強さとかの意味は何のためにそれを使うか。誰のために使うかが大事なんだと思っておる」
え、ええと?
「だからな。もし、お前が強くなりたいのなら。まずはここ・・・」
そう言って、おじいさまは私の胸を節くれだった指で軽く小突く。
「心を強く、優しくすることさ。そうすれば強くなったとしてもみんなから好かれるし、強くなれなくてもみんなから好かれるさ」
ん・・・どういうこと、です?
「はっはっは。まあ、今はまだ良いさ、分からなくとも。それよりミルシ、夕ご飯にしよう。今日は儂特製のシチューだよ」
シチュー!やった、やった!わーい!
「はは。じゃあ、一緒に準備をしよう。もう野菜を切るのは儂よりもお前の方がずっと上手いからな」
へへへ・・・あ!じゃあ、私も、偉い?
「ああ、偉い偉い。お前は偉いさ、ミルシ」
そう、さも嬉しそうに笑っておじいさまは再びゴシゴシと私の頭を撫でてくれる。それが、私にはとっても嬉しくて。それが、私にはとっても幸せで。
だから、そんなおじいさまを「クソジジイ!」なんて言うスツアーロが許せなくて。次の日ボコボコにしてやったら泣き出しちゃって、おじいさまにも叱られちゃったけど、私は悪くないと思う、絶対に。
「ところでミルシ。そう言ってきたスツアーロの坊主はどんな顔で言ってきたのかな?」
え?・・・分かんない。真っ赤な顔して、私が睨み返したら顔をプイってあっち向いちゃったから。
「そうか。ちなみに、坊主は正確にはなんて言ってきたんだい?」
せいかく?本当に言ったのは・・・えっと、「俺はお前より強いからお前より偉いんだ。だから、お前も俺を頼っていいんだぜ。あんなジジイに頼んなくてもさ!」だって。
あ!・・・ご、ごめんなさい、ジジイなんて。
「気にしはしないよ。坊主が言っただけだろう。しかし、スツアーロ・・・不器用な奴め」
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