第4話 目標(夢)

 訓練を始めてから約一ヶ月が経った。見た瞬間ではめまいがしそうになったほどの訓練メニューも、最近ではだいぶこなせるようになった。ちなみに、一週間前ほど、俺がそのことを専属メイドであるマルオンに伝えると、「実技訓練の相手を私がしましょうか?」と言ってきたことには驚いた。(その後やってみたら普通に強かった)


 そんな俺だが、最近はあることが頭に引っかかっていた。それは、


「目標の第一段階の期限が一ヶ月後に近づいてきているんだよなぁ」


 そう。俺の目標__前世からの夢__とは、


「この世界のクズたちを救う」


 というものだったのだ。うん。よくわからないと思うけれどそうなんだ。強いて言うなら、俺が悪役好きだということだ。ここでいう「救う」とは性格を矯正して生き残らせることだ。そして、一週間後に原作の始まりとなる襲撃が発生するのだ。襲撃される場所は、俺たちのいるレイヤー領__ではなく、その隣のアンバー領。領主__少し前に亡くなった元領主アンバーさんの一人娘__のラジェールに対して領民が反乱を起こすというイベントが発生する。そのイベントでラジェールが殺されて、主人公がアンバー領の領主となるのだ。そしてラジェールに使えていた者たちは主人公の仲間になり、原作が始まるのだ。まぁこのラジェールとかいう女、部下に仕事を投げ、自分はろくに何もしないという単純なクズだから仕方がないと思うんだが、白色の髪に真紅の眼をした同い年の美少女なのだ。どうしても助けたくなるだろう。


 救いに行くことは確定事項として、何をすれば良いかだ。そもそも、領の外に出るには今の領主である親父の許可が必要だ。そして、運よく行けたとしてもそこからも大変だ。「性格が腐った人の性格を戻す方法」なんて本があれば楽なんだけれど。


 俺がそんなことを悩んでいると、マルオンの声がした。


「最近は悩み事が多いようですね?」


 うん。俺が転生する前のランド君とは同じにされたくないね。


「ああ、隣領主のラジェールのことなんだが」


「、、あのランド様が昔あったことがある人ですね?恋愛対象になったんですか?」


 何を訳の分からないことを...!でも急に名前を上げたらそう思われても仕方がないか。


「いや、そういうわけではないんだが。彼女に危険なことが起きていると知ったんだ」


 俺は苦笑しながら言った。まぁ、嘘は言っていないだろう。


「会いたいってことでしょうか」


 ジト目で言ってくる。本当に恋愛対象ではない...はず。


「まぁいいでしょう。それで、危険とはいったいなんでしょう?」


 変な答えは変えさせないという眼をしている。ちょっと怖いかな... でも、一ヶ月後に反乱がおこるといっても、信じる方がバカだと思う。


「暗殺者が仕向けられているという情報を聞いたんだ」


 さっきのことは完全に嘘だ。ただアンバー領にさえ行けば何か思いつく気がした。単純な無鉄砲である。


「そ、それは大変ですね。ランド様がアンバー領へ行けるよう私から領主様に言っておきましょうか?」


 どうやら納得したらしい。それにマルオンから言ってくれるのはとても助かる。俺が言っても親父は絶対に行かせてくれないからだ。


「ああ、それは助かる」


 マルオンにお礼を言っておく。マルオンが言っても行かせてくれないかもしれないが、その時には秘策を用意してある。その秘策とは、...


 俺の部屋の扉が開いた。そしてマルオンが帰ってきた。ちょっと早くないか?


「申し訳ございません!断られてしまいました!」


 急に謝られる。親父の奴め、...


「いや、なんで君が謝るんだ?君は悪いことをしていないだろう?」


「ですが、...」


「大丈夫だ。俺には秘策があるんだ」


 あの親父、俺を嫌うにも程があるだろ!よし、すぐに俺の秘策を見せてやる。

 そうして、俺は「頑張ってくださいね~」というマルオンの声を残して親父の部屋へ向かった。


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 -親父の部屋にて-

「さっきも君のメイドに行っただろう?デタラメな証拠で行くことは許さんと!」


 これが部屋に入った瞬間の親父の第一声だ。だが、ここまでは(ちょっと展開が早すぎるけれど)予想通りだ。秘策を披露してやろう。


「それなら、俺がもし彼女を暗殺から救えたら彼女から頂いたものはすべてあなたにお渡しします。そして、失敗した場合、俺から持っている金品全てをあなたに渡す。これでどうでしょうか。」


 すると見事に、


「ふ、ふむ。そこまでの決意があるのなら認めてやろう」


 と、笑顔で言った。金に目がくらんだ親父はすぐに意見を変える。予想通りだ。


 とにかく、これで俺のアンバー領行きは確定となった。俺は一瞬で親父の部屋を後にし、メイドに報告に行くのだった。


______________________________________


どうも、底辺作者の、るのんです。


誤字脱字等ありましたら教えてもらえれば修正いたしますので気軽にどうぞ。


また、少しでも良いと思ってもらえれば♡、★3してもらえれば幸いです。

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