第2話 最強のスペック

 15歳になって、親父から森に行く許可を得た俺はすぐさま森に向かって駆け出していた。理由は、俺のスキル「召喚」を有効活用するためには倒した魔物の種類を増やす必要がある。なぜなら、「召喚」は倒したことのない種類の魔物は召喚できないからだ。ランド君は今まで魔物を倒したことがなかったようだが、原作知識の力があればこの剣__木製の原作最弱級の剣__だけでも勝てるはずだ。森の浅いところは弱い魔物しかいないはずだし。


 少し経って、森に着いた。あー、入ったはいいけど、魔物多すぎない?ゲームでは何度もボコボコにしたゴブリンが前に大量にいる。けれど、実物を見ると怖くなってきたな。後退して準備を整えてから__と思った瞬間、1体のゴブリンが木の棍棒を振りかざして飛びかかってきた。


「うわっ!!」


 俺はギリギリのところでサイドステップでかわす。正直死ぬかと思った...だが、ギリギリになったことでメリットもあった。ゴブリンの隙が狩りやすくなったのだ。ゴブリンが振り下ろした棍棒を再び上げて俺に攻撃しようとしている間に俺は持っている剣でゴブリンを斬る。


(案外簡単に倒せるんだな。)


 俺がゴブリンを倒したことで他の魔物は大体逃げて行った。ただ、油断は禁物だ。今度はゴブリン3体が襲い掛かってくる。だが、俺はゴブリンを倒したんだ。ということは、...


 --スキル<召喚>発動--


 俺の目の前で魔法陣が展開される。俺の視界が白く染まった時、魔法陣があったところにはゴブリンがいた。


「行け!!」


 ゴブリンは敵のゴブリンと勇敢に戦っている。


(こうやって隙を作ってくれて、その間に俺が倒せば...)


 そう思っていた俺は、目の前で3体のゴブリンが次々と倒れていったことを見て、驚愕していた。


(は...?)


 もしかしたら、このスキル「召喚」は、もとの個体よりも強い個体を召喚できるのかもしれない。そうだとすると、思っていたよりもさらに強力なスキルだ。

 俺がそんなことを考えていると、さらなる脅威が迫ってきた。


「オーク...か。」


 オーク。原作では1番最初の中ボスであり、チュートリアルのラスボスだ。チュートリアルとはいえ、なかなか強いのだ。俺も初見プレイの時はこいつに見事にやられた。


(どうするか...)


 オークはなかなか強いのだ。それも初めて森に入ったものが戦うような相手ではない。幸い、オークは足が遅いので逃げようと思えば逃げることはできる。


(でも...!!)


 俺はオークに向き直る。強い魔物を倒すほどスキル「召喚」も強くなっていく。それもあるが、俺は自分の実力を試したかったのだ。


「行くぞ...!!」


 --スキル<召喚>発動--


 俺はゴブリンを3体ほど思い浮かべる。俺の視界は白く遮断されて__ゴブリンが3体現れた。ゴブリン3体がオークの巨体へと向かっていく。オークは攻撃が近接攻撃しかない。ゴブリンのものより一回り、いや、二回り大きい棍棒と巨体を生かして攻撃してくる。だが今回はゴブリンのすばしっこい動きに屈しているようだ。


(いいぞ...!!)


 しかし、オークは攻撃目標をゴブリンたちから俺へと変えたようだ。ゴブリンたちの攻撃を無視しながら、俺の方へ向かってくる。その目は、とても怒っているように見えた。後ろからゴブリンたちが何度も棍棒で打ち付けているが、全く怯んでいない。そういえばランド、魔力は多いのだろうか。そこそこの名家に生まれているので多いほうだとは思うのだが、...おそらくランドは、訓練をしていない。訓練すれば魔力は増えるのだが、それをしていないということは生まれながらの魔力しかないということだ。幸いにも俺は魔法の技の名前とイメージは出来るのだ。原作の。


(さて、俺の才能を試してみるか)


 --闇魔法<黒の災難ブラック・イル>--


(もっと簡単な魔法から打てばよかった!?)


 これはまずい。魔法陣はきれいに展開しているが、魔法陣から魔法を放つときに自分の残りの魔力量を超えていると暴走してしまう。原作では自分の残り魔力を超えた魔法は打てないので正確にはどうなるかは分からないが、公式の説明にはそう書いてあった。それにこの魔法は結構終盤のボスが使う技だ。使う魔力の量もとてつもなく多いに違いない。


(あー、転生したばっかりなのに。)


 魔法陣から現れた漆黒の影がオークを包み込む。瞬く間にオークが影に包まれて見えなくなった。


 すると。


 すさまじい爆発音とともに影が消えていった。その場所に、オークはもういなかった。


 いや、ん?なんで、こんな魔法を打ったのに俺は大丈夫なんだ?暴走するどころか、原作のボスよりもきれいな技だった気がする。まさか、こいつは天才中の天才なのか?最強のスキルだけではなく、魔力の量も飛びぬけている。そんなことが、あり得るのか?確かに、原作や公式からはランドの魔力量は語られない。でも、まさか、こんなに魔力があるとは、想像もしていなかった。所詮、ちょっと魔力が多いくらいだと思っていた。確か、公式の設定では、残り魔力が少なくなると体が冷えてくるらしい。しかし、今の俺はそんな感覚をほとんど感じない。どうやらランドは俺が思っていたよりもはるかに才能があったようだ。原作でも努力さえすればラスボス級だったろうに...


 今の俺には、こんなに恵まれた魔力とスキルがある。


 だから。


 前世からの、あの夢が、一歩近づいて目標になった気がした。



______________________________________


どうも、底辺作者の、るのんです。


一話でもちょっと出てきてましたが、主人公の前世からの夢とは何なのでしょうか?


これから展開は加速すると思うので、三話以降も見ていただけたらとても嬉しいです。


また、少しでも良いと思ってもらえれば、♡、☆3してくれればとても嬉しいです。


応援よろしくお願いします。

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