HERO
「ぐーっ、、、と。」
手を組んで上に伸びをしていた。海くんは、1日中楽しそうだったけど疲れはしたんだろうな。
「………」
考え事だけは一丁前に進む癖に、なぜ会話はできないんだろうか。まったくなんの話題も浮かんでこない。相手が話を振るのをただ待つことしか俺には出来なかった。
「なあ、薫。」
「あ、ん?なに?」
話を振ってきたのを待っていたのがバレバレな反応をしてしまった。結構喜んでいたのが顔に出ていたと思う。
「食いつきいいなw」
「そんでよ、一つ聞きたいんだけどいいか?」
「なに?何でもいいけど、」
「薫さ、もしかしていじめられたりしてないか………?」
「えっ!?わっ、え!?」
いや、なんで?バレるわけがない、おかしいどう考えても。今日は少なくともいじめられているような感じはなかったはず。そんな空気は作られていなかった、海くんのおかげで。
そうだ、今日はみんな海くんに意識が向いていていじめなんてまったくなかった。なのに、なんで?気付いた?
「図星、か。俺ちょっと悲しいわ、クラスのあいつら、いい奴らだと思ってたんだけどなぁ。」
「薫がどんな状況か、実は先生にこっそり教えられてさ。隣の席の子が、みんなに少しいじめを受けてるって。」
「だからそんなに今日、、」
「ああ、いっぱい話しかけた。邪魔だったら悪いな。」
「そんなこと、、、ない」
「そうか?ならいいけどよ、」
ダメだ、やっぱりはっきり言わないと。全部、思ってたこと吐き出してみよう。
「そんなことないっ!!本当は休み時間とかもっと海くんと話したかったし、もっともっと………」
「この学校に来て初めて友達作れた、本当に嬉しい。一緒に帰ろって言ってくれたのも内心、めっちゃ喜んでた。海くん、ありがとう!」
「ははwこんなに感謝されたの初めてだなw俺も今日友達になれてよかったよ、ありがとうな。」
夕陽を体いっぱいに浴びる。いつも当たり前のようにやってきたことだったけど、今日は全然違った。見える景色、感じるもの全てが輝いていた。
希望に満ち溢れていた。
「あ、俺のこと海って呼んでくれ。」
「よっしゃ!わかった!」
「それと、明日から薫のこといじめてたやつらを全部俺がどうにかしてやる。だから薫は明るく学校に来いよ!」
「………うん!」
俺の弱さを理解して、俺を助けてくれる。俺の一生のヒーローはこの、海だ。
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