弱さ

学生作家志望

動揺

なんでみんな俺にこんな酷い扱いをするんだよ………



酷いよ、辛い。



俺が教室に入る前までは。ほんとについ直前までだ。廊下に響くほどの大きな声で騒いでいるクラスがピタッとある瞬間をもって静かになるんだ。



その瞬間はたった一度、俺が教室に1人で入った時だ。これは明らかないじめだと俺は思っているが、先生がいる前ではみんな特に何もしないし、暴力などを振るわれてるわけでもない。特別な理由や証拠がないというわけだ。


そう、なにもない。だから先生が何かをしてくれることはいくら相談してもなかった。



これから状況が変わることはない、ずっとこのまま短い学校生活をドブに捨てていくんだろうな。なんてそんなことを思っていた。しかし、あの陽気な転校生が来てから何もかもが変わることとなる。




「ういっす!!」



教室に入るや否や先生の紹介を待つことなくどでかい声を出してみんなを驚かせ、その場の空気を1発で我が物にしてみせたそいつ。



「海くん!そんな大声出しちゃダメです!先生が紹介するまで黙ってなさい。」



「すいませーんw」



「あいつやばすぎだろw」

「それなw」



その場の空気はそいつによって作られた爆笑の渦によって包まれた。クラスの陽キャだけでなく普段は隅で真面目に勉強をするような奴らでさえ、高笑いしながら騒ぎはじめるほどの渦。


もちろんそれを先生が止められるはずもなかった。先生は少し怒りながらも半ば強引になんとか紹介を終わらせて席の案内をはじめた。



「海くんの席はあそこね。薫の隣だ、仲良くしてやってくれ。」



「り」



薫、その名を言いながら先生は俺の隣の席を指差していた。アニメとかドラマでよくある展開がまさに今目の前で起きたのだ。しかも起きても仕方がないような状況でだ。



俺の薫という名前が先生の口から出てから、みんなはザワザワと今度は小さめにざわめき始めた。



「あいつついてないな、可哀想w」

「なー」



ほんとに可哀想だよ海くん。転校初日から俺の隣の席になるだなんて。毎日退屈な日々を送ることになるんだろうね。


海くんを憐れむ俺が真っ先に出てきたのは同時に、海くんもみんなと同じく俺をいじめるんだろうなという確信が出てきたからだ。こんないかにもな陽キャが俺のことをハブかないわけがない。


はあ………もう最悪だよ。



「よお薫!元気か?よろしくなー!」



「あ、おん。よろしく。」



またやってしまった、つい動揺して変な返事をしてしまった………!!こうやってドン引きされてくんだよ!!ばかばか!



海くんは席に座って俺にインパクトのある挨拶をかましてきたが、俺は久々の学校での会話に動揺をしてしまい、明らかにおかしい返事をしてしまった。



「おんってお前wなんだよ、可愛いじゃねえかw」



「え、!?」



「なんでそんな驚くんだよw褒めてんだぜ?喜べよ!」



「ああ、うん、あ、りがと?」



「薫面白いなw放課後一緒に帰ろうぜwな!」



「あ、うん。」



教室のみんながこっちを見ていた。海くんの声が会話のデカさではないからだろう、それともう一つ。俺のことを「面白いやつ」と褒めたから、それにみんな驚いたいるんだろう。



俺が1番驚いているということはみんな気付いているはずだ。明らかに動揺を隠せていない、動揺の上にさらなる動揺の火種がやってきたのだ、無理もない。



一緒に帰ろうなんて小学生ぶりだな、言われたの。

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