第52話 ランダム生成ダンジョンに中ボス(味方)誕生!

 さて、それでは今後の方針を、とクロエが口を開く。


「まあ、とにかく……五階層より更に深いなんて、わたしも知らない不確定な要素、放っとけないから~……三階層のセーフティールームを、この五階層に移しま~す。引っ越しするよ~」


「え、ええっ? 急ですねっ……じゃあ荷物とか、運ばないと――」


「というわけで〝異次元の魔法〟で接続、同期、転移して固定~……ホイッ、~。おつかれさま~、主にわたし~」


「怖いくらい手軽てがる! えっ、もうコッチの五階層にセーフティールーム来てるんですか!? うわっほんとだ後ろの扉を開いたら、アタシ達の生活する見慣れた部屋! クロエちゃんの力がお手軽に規格外すぎて怖い!」


「さすがラムちゃん、ツッコミスキルAの女……まあそれは置いといて、五階層の奥……定義上、六階層と名付けるとして。そこから何かの力や介入があるとしても、コレでふたできるよ。何かあると分かった以上、わたし油断なんてしないし~。まあでもランダム生成ダンジョンを安定させるため、重石おもしはもう一つ増やしてもいいわけで……リーリエさん、おねが~い」


「ええ。……さ、どうぞ、入って」


 クロエが呼びかけると、リーリエが〝とある魔物〟を五階層から招き入れる。

 その見覚えのある魔物に、ラムは驚いているようで。


『どうも、お招きにあずかりました――〝賢者のバーサーカー〟です』


「わっ……賢者さん、バーサーカーさん? この前……っていうかさっきは助けてくれて、ありがとうございました! でも、何でここに……え、クロエちゃん、さっき重石がどうって……ま、まさか」


 ラムの期待に満ちた眼差しに、クロエは〝どやっ〟と頷いて言う。


「そ。今は空き部屋になってる、三階層のセーフティールームで――この〝賢者のバーサーカー〟に逗留とうりゅうしてもらおうと思ってね~。いわば中ボスみたいなかんじで。ちゃんと会話できる魔物って珍しいし、まじめそーだし、いいかな~って」


「! わ、わあっ……つまり0時にランダム生成とかで消えない、ってことですよね!? よ、良かったですねぇ!」


『そうですね、いつ果てるとしても命は等価値、とはいえ……考えられる時間が長くなったというのは、好ましく思います。ありがとう、お嬢さん』


「ちゅーわけで、ラムちゃん仲良さそうだし……存在を固定するために、名前でも付けてあげてくんない~?」


「えっ。……え、えええ!? あ、アタシがですか!? 急に言われても、そんなっ……ちょ、ちょっと時間が欲しいんですけどっ……」


「え~早く決めてあげないと、もう〝異次元の魔神〟の影響も消えて、ランダム生成も元通りのはずだし……0時になったら今度こそ消えちゃうよ~?」


「いえまだ昼過ぎですし、そんな長く悩みませんってば! で、でもまあ、早く決めないと心配っていえば、心配ですし……う、うう、えっと、えっと……」


 急な無茶ぶりに、ラムが悩み、命名したのは――


「け、賢者、バーサーカー、だから、う、ううっ……ケンサカさんとか!」


「おおっ、ラムちゃんっ……ネーミングセンスやばめ~★」


「きゅ、急にそんなえた名前なんて浮かびませんってば~~~!?」


『ご安心を、お嬢さん。名称など個体を識別するための記号に過ぎません。名前にそこまでこだわりはありませんよ』


「つまりセンスはないと言われてるようなもの! う、うわーん! 焦らずもっと考えておけばぁー!」


 ラムのハートはちょっぴりボロボロ、だがとにかく命名と共に、クロエが〝異次元の魔法〟によって〝賢者のバーサーカー〟の存在を固定すると――



 ――――★鑑定結果★――――


『ケンサカさん』

職業:賢者のバーサーカー

性別:メス

種族:ランダム生成モンスター→三階層の守護者


STR(力):240

AGI(敏捷):90

VIT(生命力):250

MAG(魔力):110→150


状態異常:虚無的・懊悩→考えるあし


関係:中ボス(味方)


弱点:仮面・ケツ・心臓


 ――――★鑑定終了★――――



「! アタシのハートブレイクはともかく……これで0時に消えちゃうことはなくなるんですねっ。いえまあ〝さん〟まで名前のつもりはなかったんですけど、この際、いいか……おめでとうございます、えっと……ケンサカさん!」


『お嬢さん……ありがとうございます。ボス(※クロエのこと)も、どうやら魔力まで分けて頂いているようで。自分などでは考えることくらいしか出来ませんが、無知なりに役割をまっとうします』


「あいあい。えーと必要なら、扱えそうな魔物とかランダム生成されたら、しもべにしちゃっていいかんね~……まあ魔力的に三匹くらいが限界だろうけど、三階層の部屋に一匹ってか一人じゃ、寂しいっしょ? あと必要なもんあったら、ある程度は融通ゆうづうするから、気付いたら知らせてね~。んじゃ早速、三階層に送ろうか?」


『お気遣い痛み入ります。それでは、お願いします……あ、早速で申し訳ございませんが、座って考える用の椅子だけ置いて頂いても? 他は気付いた時、お願い致しますので』


「はいよー。んじゃハーク兄さんの転移用の宝玉と同じモン渡しとくから……何か用があったり、問題が起きたりしたら、連絡するように。またね~」


 言うが早いか、〝賢者のバーサーカー〟改めケンサカさんを、一瞬で転移させる《異次元の魔女》ことクロエ。


 こうしてハーク達のご実家であるランダム生成ダンジョンに、新たな住人が――即ち中間管理職、もとい中ボスが誕生したのだった――!

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