第30話 第二階層での探索結果 ★ランダム生成アイテム鑑定回★

 ――★遭遇した魔物と危険度の鑑定★――


<危険度B級>

群れを成す一匹狼×8

おしとやかなバイコーン

うらぶれた吸血鬼

横長のアイアンゴーレム

庶民的なゴブリンソルジャー×4

陸戦型の大王イカ


<危険度A級>

鋼メンタルのデーモン

浮かれる悪霊騎士

世界樹のウッドゴーレム

高速のロック鳥


<不戦・ノンアクティブなど>

腰痛のスケルトン

こだわりのユニコーン


 ――――――★鑑定終了★――――――



 目につく限りの魔物をあらかた倒し終えて宝石化させた、ハークとリーリエ。

 ハークの背後から可能な限り付かず離れずをたもち、戦況を見守っていたラムが、ひと段落したのを確認して師に駆け寄る。


「わ、わあ~……圧倒的というか、余裕というか……明らかに危険度A級の魔物にさえ危なげなく勝っちゃうなんて、ハーク師匠もリーリエさんもすごいです……!」


「まあ単独ならともかく、リーリエもいる時は本当に助かるよ。二階層くらいなら今の装備でも余裕だな。まあやっぱり、二つ名が噛み合ってる魔物は強いな……そう言う意味じゃ今回一番の難敵は〝高速のロック鳥〟だったけど、リーリエが何とか羽を射抜いてくれたおかげで、俺もトドメを刺せたし」


「は、はいっ、すごいコンビネーションでカッコよかったです! ……まあでも倒しちゃったわけですし、全部にはツッコミきれないですけど……個人的には、大王イカが怖かったですねぇ……うねうねして気持ち悪かったです、ふえぇ……」


「ああ、大王イカか……アレも〝陸戦型の〟だから生きてられたんだろうな。環境や二つ名によっては、干からびてスルメになって見つかるコトもあるしさ。ハハハ」


「生態があまりに不憫ふびんすぎて、可哀想です……ふえぇ……」


 二つ名の結果次第で所感も一変いっぺんする、これもまたランダム生成情緒じょうちょである。そうなのかな、そうかも。


 と、何とも言えない表情のラムが、更に微妙な心境を上塗うわぬりする言葉を。


「あと、戦わなかった魔物の。……〝こだわりのユニコーン〟とやらが、何か木陰こかげから妙に納得したように頷きつつ、アタシやリーリエさんを見つめてくるのが……何やら意味深で、すごいヤなんですけど……」


『ウン、ウン……ヨシ、ヨシ……』


「ああ、本当だ……ちなみに俺に対しては〝敵対気味の中立〟だけど、ラムやリーリエには何でか知らんが〝超友好的〟らしいぞ。騎乗も可能みたいだけど……」


「気持ち悪いので遠慮します。なんだかな、ハーク師匠のセーフティールーム生活、初日の結果如何いかんによっては、めっちゃ敵対してた可能性とかあるのかな……そう考えると結果的に助かってる気もしつつ、それでもなぁ、女心としては何だかなぁ、って感じなんですよねぇ~……はあ、もお~……」


 なかなか複雑な想いを抱えている様子のラム、だがそこでリーリエが、またいつの間にやら周囲の探索を終えて戻ってきたらしく。


「ハーク、ラムさん。やっぱりさっきの殲滅せんめつで、この周囲の魔物は一掃いっそうできたみたいよ。今ならアイテム収集も楽そうだわ」


「おっ、助かるよリーリエ、ありがとうな。よーし、それじゃ……ラム、今度こそキミの装備を見つけてみようか! 何か良いのが出ればイイんだけどな……っと、早速だけど何か落ちてるな。まずは試しに拾ってみるんだ」


「わっ、わっ……りょ、了解です! うわー緊張してきましたっ……」


 五階層の時は拾うこと自体が不可能だったラム、だが二階層ではどうか――落ちているのは、見た目には円形の盾に見えるが、果たして。


 とにかく、とラムが屈み込み、拾おうとすると――


「! は、ハーク師匠、これ………っ、! 五階層の時と違って、今回は拾えそうですよ~っ!」


「! おお……おお! 本当か!? マズイな、コレは……フ、フフッ、一気にテンション上がってきたな――!?」


「ふ、不覚にも、アタシもです! それじゃ、拾っちゃいますよ~!?」


 言いながらラムが拾い上げ、ハークがいそいそと鑑定する、と――!



 ――――★鑑定結果★――――


『アグニのバックラー』

 鉄製だが小さいため軽量で、取り回しやすい円形の盾。扱いやすく、初心者から熟練者まで重宝される。


※基礎防御力:+12

※付加効果(防具の場合):炎属性の無効化、寒冷対策、防御時に炎属性の反撃


 ――――★鑑定終了★――――



「さっ――さすがラム、いきなり高性能なレア二つ名つきだァ――!!」


「わ、わーーーっ!? なんかもう見るからにスゴイですね!? ハーク師匠のテンション急上昇にも慣れてきちゃったからか、アタシも素直に嬉しいです~! まあアグニっていうのは何なのか分かりませんけど……」


「四階層の魔物として出てきたコトあるから俺は知ってるんだけど、なんか炎の神様っぽかったよ。まあ盾とか持ってた様子はないと思うけど、そこはランダム生成だし、加護か何かがあるって解釈でイイんじゃないかな。でも幸先さいさきがイイな、ラム……新しい装備だぞ!」


「わ、わわわっ、本当にアタシがもらっちゃって、いいんでしょうか……ひえ~、ほんのり温かくて気持ちいい、確かに加護っぽい……こんな軽くて扱いやすいのに、付加効果も優秀ですし」


「いや、本当に良かったな~。それが〝焦熱のラウンドシールド〟とかだと、似たような効果でも装備してるコッチの腕がジリジリ焼かれたりするから、装備してらんないんだよな。軽く拷問だったよ、ハハハ」


「いえも~ほんっと良かったです! アタシLUKくらいしか取り柄ないの恥ずかしかったんですけど、今ばっかりは感謝ですよ!」


「フフッ、LUKだけじゃないさ……ラムのツッコミは貴重だぞ!」


「おお~っと嬉しくないですねぇ絶妙に! もっとこう~、可愛い弟子を可愛がるとか猫可愛がりするとか~っ……あるでしょう! ねっ!?」


「おお、ツッコミばかりでなくボケるとは、どんどん可能性を広げていくな……! まあとにかく、アイテム収集を続けるぞ! フフフ……」


「誰の何がボケですか、もうっ! まあでも、ハーク師匠のテンション上がってるのは、ちょっと嬉しいですから……つ、付き合ってあげるんですからねっ、勘違いしてくださいよねっ、ふんっ!」


 ハークの言葉通り可能性を広げようとしているのか、ただ単にキャラブレなのか分かりにくい、ツンデレ失敗女ことラム=ソルディアだが。


 とにかく見るからにテンション上昇中のハークを見た、リーリエの反応は。


「ハーク、やっぱりランダム生成アイテムを拾うの、好きなのね……楽しそうなハーク、無邪気できゅんきゅんするわ。うふふ♡」


 何はなくともハークのこととなると、大らかというか器がビッグというか。さすが〝職業:ハークの幼馴染〟とでも言えば喜ぶことだろう。


 まあそれはそれとして――三人で暫く二階層の探索をして、拾ったアイテムは次のような結果だった。



 ―――――★本日のリザルト★―――――

〇=お持ち帰り ×=捨てる・処分 △=一応、持ち帰るか……


<ハークが拾ったもの>

×メンズの岩石

×ウッドの大木

×慎重なダイナマイト(※付加効果:攻撃力÷10、火薬量が慎重?)

×おまえらの大砲(※付加効果:おまえらを発射する)


<ラムが拾ったもの>

〇アグニのバックラー

〇栄光のパンプス(※足装備)

〇幸せのシュガー(※調味料)

〇正義の岩塩(※調味料)

忖度そんたくの万能薬(※付加効果:心なしか体力も回復してくれる)

〇ウインドカッターのスクロール(※魔法書)

△絶対的なすごろくゲーム

×真っ直ぐな曲刀

×神速のチキンソテー(※拾った瞬間に飛び去った。怖い)


<リーリエが拾ったもの>

〇竜の豚ロース

×ルビーの骨付き肉

×暴虐のラッコ肉(※ラッコがよく分からなかったためスルー)

〇井の中の大魚×5(※大魚という割りに小さめサイズ)

〇炸裂の矢筒

〇魔神のパンティ


 ――――★本日のリザルト終了★――――



 二階層での結果に、ハークの反応は。


「―――よしッ!! 今日はイイ収穫だったな、リーリエのサポートと……間違いなくラムのLUKのおかげだ! こんな日は滅多になかったぞ!」


「おお~っ……アタシも楽しかったですけど、ハーク師匠が喜んでくれるのが一番嬉しいです♪」


「ああ! フフフ、収穫がかんばしい日は、やっぱりテンション上がるさっ……ラムも結構、装備を更新できたし、上々の結果だ!」


「あ……は、はいっ! そうですね、よく分からないすごろくとかもありますけど、盾と靴は、良い装備で……装備、で。………」


 言いつつ、ラムが横目で見るのは――リーリエの収集品の、


(……魔神の……パンティ……)


「ふう、今日から新生活だし、下着の替えが手に入るのはラッキーね……ていうかこんなの落ちるようになったのね、奇特きとくだわ。ん? ラムさん、どうかした?」


「……あ、い、いえっ! 何でもないですリーリエさんっ(魔神か……)」


 それが〝魔神のもの〟なのか〝魔神の加護でも付いている〟のか、最悪〝魔神柄とかだったらどうしよう〟と――それこそ神のみぞ知る、というところだが。


 何にせよ〝魔神のパンティ〟――その尖りに尖ったインパクトに、何だか本日の全てを持って行かれた気がしてならないラムだった。


※リーリエに確認させて頂いたところ、さすがに魔神柄ではなかった模様。

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