第26話 ランダム生成ダンジョン料理バトル、勃発――少女剣士VS幼馴染エルフ――!!

 ハークの部屋からダイニングに移動し、キッチンに立つ二人の乙女。


 片や、ハークに弟子入りし、その縦横無尽のツッコミにより存在感をかもす、もはや無くてはならない存在――ラム=ソルディア! あとLUKが高いぞ!


 片や、ハークの幼馴染だという話で、見たところ〝種族:エルフ〟のミステリアスな美女――リーリエ=アリエンス! もうちょっと色々説明してくれ!


 出会いからいきなり料理対決に突入した二人が、火花を散らして対話する。


「それではリーリエさん。〝料理人のフライパン〟など料理スキル付与の調理器具は使わず、どちらがハーク師匠を満足させられるか……勝負です!」


「受けて立つわ。食材はここへ辿り着く前、拾ってきた……私は自分のを使うから、ラムさんは備蓄のでも自由に使えばいい」


「くっ、余裕ですねっ……でもアタシだって、ある程度は拾ってるんですっ。少しはハーク師匠の備蓄をお借りしますが……甘く見ないでくださいっ!」


「ふっ、意気だけは買うけれど、その威勢いせいがいつまで続くかしら。それじゃ……調理、スタートよ」

※リーリエは〝軽はずみのエプロン〟を装備した!

(〝軽はずみ〟=AGI:+5、注意力の低下)


「ま、負けませんからっ……ラム=ソルディア、ハーク師匠の弟子として、がんばりましゅっ!(噛んだ)」

※ラムは〝フリルのエプロン〟を装備した!

(〝フリルの〟=かわいさ:+20、あざとさ=+40)


 こうしてついに始まった、乙女たちのバトォル(※料理です)――が、作業が始まってすぐさま、ラムは驚きに目を見開くことになる。


「よーし、それじゃ朝ごはんですし、軽く……――ッ!? なっ、リーリエさん……は、速いッ!? 包丁さばきが目に留まらな……今、胡椒で味付けし……って、もう何かを焼いて、いえ焙って……こ、言葉が追いつかないほどの手際なんて、AGIが高いって問題じゃないですよ!? う、うわ、いつの間にか何かのソース煮込んでる……一体何が起きて……」


 調理中の動作と動作の継ぎ目すら目視困難もくしこんなん、それほどの技術を発揮するリーリエに、驚くばかりのラムへと――ダイニングで結構呑気しているハークが補足を。


『あ、ラム。ちなみにリーリエは〝家事スキルA〟だからな~』

※〝家事スキル〟の内訳=料理・掃除・洗濯などの総合技術


「え、ええええ!? そ、そんなにスゴイんですか、リーリエさん……アタシの家事スキルがBだっていうんなら、勝ち目がないんじゃ――」


「……ふーん、何もしない内から白旗? まあ、別にいいけれど。料理する気がないなら、おとなしくダイニングで座ってたら?」


「っ。リーリエさん……いいえ、そんなわけありません、まだ戦いは始まったばかりですっ! 見せてあげますよ、スキルのランクが決定的な差じゃないんだってことを――!」


「言うだけならタダ、ね。私のほうこそ、見せてあげるわ。正妻ルート待ったなしの幼馴染の実力は、伊達じゃないということを――」


※なんか盛り上がっているが、朝食を作っているだけです。


 さて、予想外の技術を行使するリーリエに、少し遅れてラムも調理を始め。

 流れる時を惜しむ暇もなく、あっという間に料理は出来上がっていく――まあ朝食だし、そんなに時間かけられましてもね……(野暮)


 とにもかくにも、早々に一品を作り上げたのは、やはり先行していたリーリエで。


「さ。これこそ……敗北など知る由もないハークの幼馴染エルフが、腕によりをかけ愛を籠め、せっかくだから祈りとか願いとか呪いとか練り込んで、丹精込めて作り上げた今日の朝食よ。召し上がれ」


 やたら能書きが長い気はするものの、とにかくリーリエが作ったのは――!



 ―――★リーリエの使用食材★―――


・硬質なビーフ(〝硬質な〟=防御+10、柔軟性低下)

→柔らかなビーフ(※調理スキル発動=防御上昇効果の打ち消し、柔軟性アップ)

・平凡なパン

・勢いのブラックペッパー(〝勢いの〟=AGI+10、注意力低下)

・早起きのガーリック(〝早起きの〟=睡眠・寝ぼけなど状態異常回復)

・元気なオニオン(〝元気な〟=VIT+10、活性化付与)


 ――――★食材説明・終了★――――


 ↓     ↓     ↓


 ――――★鑑定結果★――――


『(★5)調理済みのローストビーフ』

 ブロック状のビーフを蒸し焼き、もしくは炙り焼きにした肉料理。

 好みに応じた大きさでスライスするのが基本。そのままでも、色々な工夫をしても、美味しく食べられる。特性のオニオンベースのソースは甘辛く絶品。


『平凡なパン→サンドイッチ用のパン』

 サンドイッチ用に使いやすいよう切り揃えられたパン。


●合成!『(★5)調理済みのローストビーフ』×『サンドイッチ用のパン』


 完成品

『(★5)ローストビーフのサンドイッチ』

 ローストビーフをパンに挟んでサンドイッチにしたもの。甘辛いソースがパンに絡んで余すことなく美味しく食べられる。ハラヘッタ。


※付与効果=柔軟性アップ、活性化付与、注意力低下、一定時間STRとVIT向上

※回復効果=体力全快、睡眠・寝ぼけなど回復


 ――――★鑑定終了★――――



 どどーんっ、とダイニングのテーブルに置かれた、肉塊の如く豪快なローストビーフと、サンドイッチ用に切り分けられたパン。


 出来立てのローストビーフは香ばしく、食べやすいようあらかじめ切れ目が入っており、それをナイフで切り分け、パンに挟んで食べるのが常道だろう。


 いかにも食欲をそそる、しかもザッと見てもローストビーフだけで五人前はありそうな――そんなを作り上げた幼馴染エルフは、ドヤ顔で問う――!


「さあ、どうかしらハーク……今日の朝食の感想は?」


「朝からすごい重そうだなって思う」


「さすがハーク、私の愛の重さを理解してくれてる……きゅんきゅん♡」


 ハークの率直な感想を、リーリエは歪曲わいきょくしてとらえている気がしてならない。


 一方、少し遅れてラムもまた、調理を終えてダイニングに入ってくる。


「っ。香りだけでも分かっちゃいます……なんておいしそうな料理ッ……これが家事スキルAの実力! ……それはそうとすっごい重そうだな、ハーク師匠のおなか大丈夫かな……くっ、アタシの簡単な料理じゃ、太刀打ちできないんじゃ……にしても重そうだな、朝から丸々ローストビーフって、何だかな……」


 どんな時でもブレずにツッコミを入れてくれる、そんな少女剣士ラムが作り上げた朝食とは――!



 ――――★ラムの使用食材★――――


▲=ハーク師匠の備蓄をお借りして


・最高級のパンの余り(〝最高級の〟=祝福付与、パンの全ステータス=+8%)

・不死鳥の卵(〝不死鳥の〟=自動回復付与)

▲幸せのバター(〝幸せの〟=幸運付与)

▲幅広のチーズ(〝幅広の〟=攻撃範囲拡大。この場合、チーズの攻撃範囲)


※補足

 不死鳥は単独で存在が確立するため、卵は無精卵だった。ヒナから育てたかったな、残念だな……ていうかじゃあ産む必要すらあるワケ?(ちょい憤慨オコ★)


 ――――★食材説明・終了★――――


 ↓     ↓     ↓


 ――――★鑑定結果★――――


『(★10)調理済みのピザトースト+目玉焼き』

 バターを塗ったトーストの上に、チーズをとろけさせた簡易的な料理。具材のトッピングも簡単。目玉焼きを丸ごと乗せるのはロマン。


※付与効果:自動回復付与、祝福付与、幸運付与

※回復効果:体力回復

※★10効果:体力回復→全快化、付与効果が一日持続する


 ――――★鑑定終了★――――


 自身の作った料理を即座に鑑定されるという、事によっては身構えたくなる話だが――その結果に、少しばかりラムは首をひねる。


「あれっ? あのあの、ハーク師匠……調理済みの★って5じゃ――」


「くっ―――調理だァァァァア!!」


「うわぁもうビックリする! えっ、ええ~っ……何ですかクリティカル調理って、耳に馴染みが無さすぎて戸惑うんですけど……」


「料理が完成した時、稀に出る……が、十年も暮らしてきた俺でさえ、★10なんて十回あったかどうか……ちなみに★6~9は恐らく存在せず、すっ飛ばして発生するぞ。★10は明確にメリット効果も鑑定できるし、テンション上がるんだっ……にしても、それをいきなり引くなんて、さすがラムのLUKだな!」


「そ、そうなんですか? えへへ、こんな時でもランダム生成なんだなぁって微妙な心境もありますけど、ハーク師匠が喜んでくれるなら、アタシも嬉しいです♪ ……ところで★10の場合、味も良くなるとかは……?」


「味とかには全く影響しない」


「そこがですねぇ、本当にですねぇ、ガッカリポイントなんですよねぇ……いえまあランダム生成効果でおいしくなるとかだったら、何が作用してるのか分からなくて逆に怖いかもですけど……でもな~何だかな~」


 不満がちょっぴりツッコミに現れるラム。


 と、テンション上がっているハークを見て、リーリエが呟くのは。


「っ。ハークがランダム生成にハマっちゃってるのを見越して、こんな料理を作るなんて……やるわね、ラムさん。さすがハークの弟子を名乗るだけはある、といったところかしら」


「いえあのリーリエさん、完全にランダム生成の結果ですから。アタシにとってもコレ、完全に想定外ですから」


「でも、そうこなくてはね……この勝負、面白くなってきたわ――!」


「話を聞いてくれないんですよねぇ、リーリエさん……何だかな、言動といい、この御実家でもトップクラスにヤベー人なんですかねぇ……」


 ラムもなかなか悩ましいところではある、が、にもかくにも。


 この料理対決の行方は――果たしてどちらに軍配が上がるのか――!?


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