第18話 第五階層での探索結果 ★ランダム生成アイテム鑑定回★


 ――――★鑑定結果★――――


『生肉の巨神剣』

 古の神々の内、巨人の神が愛用したとされるナイフ。神からすれば短剣だが、人間にしてみれば大剣である。


※付加効果:攻撃力=255~(測定不能)÷10(〝生肉〟効果)=28

      命中率=-30% クリティカル=+30%

      両手持ち用の武器・食用可能(〝生肉〟効果)


 ――――★鑑定終了★――――



「……………………」


「あのハーク師匠、大丈夫です? にしても生肉のって、また変な二つ名ですねぇ……大剣そのものが、もうただの肉塊で――」


「うわあああああああああああ!! あッアアッ……せっかくの、せっかくの高性能武器なのにっ……変な二つ名のせいで台無しにいィィィィッ!!」


「うーわビックリした!? だっ大丈夫ですかハーク師匠!? 師の想定外なリアクションにどう反応すれば良いかわからない弟子のアタシ! こんな大声、出会って初めて聞いたんですけど!?」


「う、ううっ……ごめんな、ラム……せっかくの剣だし、剣士のラムにイイ装備を用意してやりたかったんだけど……俺のが悪いせいで、こんな……」


「ハーク師匠、まさかそんな、アタシのためだったなんて……きゅんっ……♡(状態異常:乙女心)」

※乙女心:軽度な混乱・盲目効果


 また何やら奇特な状態異常が発生している様子のラムだが、すぐに気を取り直し、咳払いしつつハークを慰めようとする。


「こ、こほんっ。……だ、大丈夫ですよ、ハーク師匠。それにほら、食べられる生肉なら、食料として便利ですしっ。見ようによっては別の国の、えーと……そう、ケバブみたいな食べ方が出来そうで――」


「う、うう、いや……生肉系は、何の肉かハッキリ分からない限り、よほど困窮こんきゅうしている時でもないと食べたくない……場合によっては〝呪い〟や〝絶望〟が付いちゃうし、最悪の場合は〝即死〟とかあるし……心情的にもな……」


「コレあるいは巨神の肉っていう可能性もあるんですか!? 〝生肉の巨神〟までが当たり判定の可能性も!? うわーそれはアタシもイヤですけど! で、でも、せっかくの高性能武器なら、何かこう……あっ。そういえば255以上は測定不能らしいですけど、十分の一になって28ということは……本来は攻撃力280くらい、ってことなんですかね? そういうのが分かるだけでも――」


「ほほう、素晴らしい着眼点だ、ラム……なるほど、測定不能タイプの武器も、そういう見方をすれば確かに、元の数値を判別できる……ナイスだな!」


「アッハイッ。……あのあの、ハーク師匠の情緒の緩急が、なんていうか心配なんですけど……立ち直りも妙に早いですし……」


「まあ何だかんだ言って、ランダム生成ダンジョンではこういうのだからさ。ちょっと悪い結果くらいで、いちいち長々と引きずってたらキリがないし、大事なのは切り替えだよ切り替え。ハハハ」


「なるほど、十年のランダム生成ダンジョン生活で、結果的に鋼メンタルが培われちゃったんですね……にしても緩急が激しすぎて、いっそ躁鬱そううつを思わせるのが心配なんですけど……何だろ、逆に最初の段階で感情を発散させたほうが、後で引きずらないとかあるのかな……う~ん……」


 悩める少女剣士ラムは、まだまだ慣れていないようだが――もう捨てていくしかない大剣は置いていき、次のターゲットを発見する。


「ムムッ。……見ろ、ラム。あそこに重量級の全身鎧が置いてある……どうだろう、アレは拾えそうか?」


「ムリ言わないでくださいよ。さっきの大剣より重そうですよ、一応、試してみますけど……ぅ、んっ! ハイ、ムリですムリムリ」


「だよな。じゃあ今回も、代わりに俺が。……………」



 ――――★鑑定結果★――――


『ギックリ腰の将軍重鎧』

 戦場にて名高き将軍が身に纏う、最高級の全身鎧。神官の祝福もあり、属性への耐性も非常に高い。


※付加効果:防御力=+180 耐性=炎・神聖・闇・斬撃 弱点=雷

      頭・足への同時装備は不可。

      スキル〝指揮〟〝鼓舞〟〝突撃〟強化


※デメリット:AGI=-20 状態異常:ギックリ腰(〝ギックリ腰〟効果)

(ギックリ腰:AGI=強制的に一桁、激痛の継続ダメージ)


 ――――★鑑定終了★――――



「アアアアアッ! ハアッ、オッ、オアアッ……デメリット効果がデカすぎて……着れるかこんなモンンンンンンン!!」


「戦い過ぎてギックリ腰になっちゃったんですかねぇ……あっ、ハーク師匠、ありましたよ! あっちにも何だかデッカイ盾が!」


「でかした! ふう、さて気を取り直して、と。……………」



 ――――★鑑定結果★――――


『生きているデモンシールド』

 悪魔が制作したとされる魔界の盾。禍々しい外観だが、人知を超えた技術で生み出されたそれは、間違いなく高性能。


※付加効果:防御力=90 耐性=毒・斬撃 吸収=闇 弱点=神聖

      スキル〝呪い〟強化・闇魔法の強化


※〝生きている〟効果(詳細鑑定)

 VIT=+10、成長する装備。

 装備の性質によって意思を持つ。この場合〝関係:敵対〟


 ――――★鑑定終了★――――



「これはっ、オ、オオッ……オホホイオホホイッ……コイツッ……襲ってくるぞぉぉぉ! クソッめっちゃ噛みついてくる! 装備してられっか! ホオォォォオッ……ホアッチャアァァァ!!」


「おお、ハーク師匠のハイキック(〝格闘王の名刀〟の格闘強化アリ)で一発コナゴナに……襲ってくる盾とか、敵でしかないですもんねぇ……あっ、ハーク師匠! これ、食べ物ですよっ。これならアタシにも拾えます……はい、どうぞっ♡」


「ありがとう、ラム=ソルディア。キミはとても気が利く優秀な弟子だね(友好・対話スキル発動)。じゃあ、鑑定しようか。………………」



 ――――★鑑定結果★――――


『純金のホールケーキ』

 一流パティシエが制作したホールケーキ。見た目ばかりでなく味も一級品の、職人の技が光る。


※付加効果:LUK=+10(ホールケーキの)


 ――――★鑑定終了★――――



「アアアッ! オオオッ、ンフッ………食えるかァァァァァァ!!!」


「うーわー……コレ本当に全部、純金ですよ……引くほど高く売れそう……説明を信じるなら〝パティシエなにしてるんですか〟って感じですけど……あっ、ハーク師匠! ほらほら、あっちにも何かが……!」


 ――――――――。


 こうして、暫くの間。

 ハークとラムの師弟パーティーは、五階層を探索した訳だが。


 果たして本日の成果は、要約すれば次のようなものだった。



 ―――――★本日のリザルト★―――――

〇=お持ち帰り ×=捨てる・処分 △=一応、持ち帰るか……


<ハークが拾ったもの>

×生肉の巨神剣

×ギックリ腰の将軍重鎧

×生きているデモンシールド

×干からびたアークワンド

×おフランスの日本刀

×世界樹の冷凍マグロ

×腰抜けのアサシンブーツ

×えげつないほどのゴリラヘッド

△新米の熟練者教本

△空気の読めるツイスターゲーム

〇猪突猛進のステーキ


<ラムが拾ったもの>

△純金のホールケーキ

×炎帝のかき氷

〇全快の万能薬

〇鎮静のリンゴジュース

〇不死鳥の卵



<遭遇した魔物>※友好・中立は不戦。敵対はハークが排除。

賢者のバーサーカー=中立→友好

生まれつきのアークエンジェル=中立

安全なミミック=友好と敵対の狭間で懊悩する中立

ダンサブルな陰陽師=ただ踊り続けていただけの中立

九番目の四天王=中立

陽気な殺人鬼=クソほど敵対

積極的な異教徒=アホみてぇに敵対


 ――――★本日のリザルト終了★――――



「チクショウッ……チックショオオオオオオッ!!」


「ツッコミきれないですし、そもそも言葉の意味が分からなくて、どうツッコめばいいのか分からないものまで……オンミョウジとは一体……? というかハーク師匠、もしかしてLUKちょっぴり低い(忖度そんたく)のでは……?」


 ハークの慟哭どうこくが響く中、ラムは遠い目をするしかなかった。

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