第17話 さあ、お待ちかねの――アイテム拾いのお時間だァァァ!(※ハーク談)

 さて、無事にダンジョンの主への挨拶も終えたことだし、とハークがラムと共に五階層を歩きつつ会話する。


「よーし、それじゃ心置きなく、探索を始めるか……お待ちかねの、装備品やアイテムの収集だ!」


「お、お~っ! えへへ、まだちょっと〝新米冒険者なのに、ほんとにいいのかな……〟という気はしてますが、正直ちょっと楽しみですっ」


「フフフ、そうだろう、そうだろう……正直、俺も良いアイテムとか拾えた時は、ついガッツポーズ決めてしまうコトもある……しかも今日からは、規格外のLUKの持ち主であるラムがいてくれる。不覚にも、テンション上がってきたな……!」


「あ、アタシに期待されるの、ちょっとプレッシャーですけど……でも確かにハーク師匠、出会った日に〝伝説のナイフ〟とかでテンション上がってましたもんね。やっぱハマっちゃってるのかな……ま、まあとにかく」


『一日で消える命に、果たして意味は……否。一日だろうと数百年だろうと、そこにあるのは時の問題のみ、意味に違いなどない……命とは結局、正しく等価値なのでしょう。……よし、次の問題は……』


「……考え続ける〝賢者のバーサーカー〟さんからは積極的に目をらしつつ、アイテムを拾っていきましょ~!」


 なんか壮大なことを考えている魔物から目を逸らし、刹那的な享楽きょうらく(アイテム拾い)に没頭しようとする。なかなか皮肉的じゃねーの。


 改めて、ハークが索敵して危険な魔物がいないか確認していると――道の先に、何かを発見したようで。


「! フッ、フフッ……早速きたな、見たトコ……あれは〝大剣〟だ。さて、一体どんな武器なのか……!」


「えっ、あっ、確かに……結構遠いのに、良く見えますね。〝神経質のペンダント(感覚鋭敏化の効果あり)〟が利いてるのかな……って、そういえばハーク師匠の鑑定スキルなら、この段階で鑑定できちゃうんじゃ?」


 ラムが疑問を口にすると、ハークがこのランダム生成ダンジョンの仕組みにおいて、結構重要なことを説明する。ここテストに出ないのでメモ取るように(取らなくていいです)


「ああ、それなんだけどな……仕組みとかは説明できるワケじゃない。だから事実だけ言うけど、〝ランダム生成ダンジョンで床に落ちているアイテム〟は、〝その段階だと〟みたいなんだ」


「へ? そ、、って……どういう……?」


「先に言った通り、仕組みとかは分からないんだ、ゴメンな。だからとにかく、重要なのは……〝に、〟ってコト。これも〝異次元の魔力〟が作用してるんだろうけどな」


「な、なるほど……理解できたわけじゃないですけど、とにかくそういうものなんだ、と納得しますっ。とにかく誰かが拾った瞬間、それがアイテムとして成立するんですねっ」


「そうそう、適応力が高くて助かるよ。今の段階で分かるのは〝ガワ〟だけ……たとえば剣か食物か消耗品っぽいか、とか大きな種別タイプくらいだな。……ちなみに徘徊してる魔物とかは、息をして動いてるという時点で、0時から存在が確定しているよ。魔物に対しては遠くからでも鑑定できるのは、こういうコトだな」


 もう一度〝なるほど〟と頷いたラムに――説明を終えたハークが、今度こそ本題を促す。


「と、いうワケで……さあラム、あの〝大剣〟を拾ってみてくれ!」


「ふえ。……ええええっ!? あ、アタシですかっ? いきなりそんな、見つけたのだってハーク師匠なのに……」


「まあまあ! ラムの規格外のLUKがどれほどいているか、一先ひとまず試す意味でも! 大丈夫、たとえ結果が〝ナマクラの〟とか〝腐った〟とか〝しょぼくれた〟とかでもラムを責めたりなんて絶対しないから! そもそもランダム生成なんてそんなもんだから、ここは一つ気楽に!(状態異常:高揚)」


「うわあ勢いがかつてない! ていうかそんなハズレ二つ名あるんですね……うう、わ、わかりましたよう……でも本当、期待しないでくださいね! 絶対ですよ、まず試しにってだけですから! よいしょ、っと……」


 何度も念を押しつつ、かがんだラムが。

〝ごくり〟と、緊張を飲み下しつつ――大剣に手を伸ばす、と。


「! ……こ、これは……これはっ!」


「! ラム、どうした……どうしたラムゥ!(ワクワク)」


 期待するなと念を押されたハークがテンション高めに尋ねると、ラムは屈み込んだ体勢のまま、顔だけ振り向いて――



「おっ――――――!?」


「そっ―――そうキタかァァァ! 盲点だった……持ち上げるコトも出来ないという事態、盲点だったァァァ!!」


「うう、申し訳ないです、文字通り力不足で……でもコレ本当、ピクリともしないんですけど、どんな重量なんですか……まあ、アタシのSTR不足のせいもあると思いますけど、岩みたいな手応えですよコレ……」



 消沈しょうちんしつつツッコミは忘れないラムに、ハークは〝仕方ない〟と頷いて、弟子に代わって大剣を拾うべく屈み込む。


「うーん〝アイテムを拾う〟って行為が出来てないからか、触れただけじゃ存在は確定してないな、残念だ……まあ、それならそれで仕方ないさ。今回は俺が拾うとしよう。ラム、見てるんだぞ」


「は、はいっ、ハーク師匠! ……でも大丈夫ですか? それ本当、信じられないくらい重かっ――」


「よいせ。よし、拾えたぞ。結果は………………」


「うわあ軽々と。一体どんなSTRなんですかハーク師匠。アタシ気になりすぎて、早く鑑定スキルを覚えたいんですけど。……あれ? ハーク師匠、どうしました? もう鑑定、終わったんですか? ハーク師匠~?」


 何度ラムが呼んでも、無反応のハーク。


 そう、鑑定は既に、終わっている――その結果とは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る