第11話 ★今日のランダム生成ダンジョン料理:フレンチトーストとラスク★

 ――――★鑑定結果★――――


『(★4)調理済みのフレンチトースト』

 しっとりとした食感が特徴的で、まろやかな味わいのパン料理。


※付与効果:祝福・幸運 神聖・闇・火耐性

※回復効果:体力全快 暗闇・毒・絶望回復



『天使の蜂蜜』(フレンチトーストの付け合わせ)

 蜂の集めた蜜。


※付与効果:祝福倍加・一定時間、自動回復



『(★2)調理済みのラスク』

 パンの外相クラスト(パンの耳などの部分)を油で揚げたもの。サクサクとした食感が特徴で、オヤツにも最適。


※付与効果:火耐性

※回復効果:体力+10


 ――――★鑑定終了★――――



 木造の食卓に並べられた料理――フレンチトーストを、行儀よく着席していたラムが、小さな口でパクッと頬張ると。


 ―――次の瞬間。


「もんむ、もんむ。………―――!? こ、これはっ……

 う、うーーーまーーーいーーーですよぉぉぉーーーっ!?」


「よかったよかった。もぐもぐ。……うん、よく出来てるな、〝料理人のフライパン(料理スキル付与、攻撃力25)〟のおかげだな」


「最高級パンのふわふわな食感と奥深い甘やかさ、上質な卵とミルクの絡んだ濃厚な味わい、それなのにクセのないまろやかな口当たりッ……なんて、なんてものを食べさせてくれたんですか、ハーク師匠ッ……こんなの食べっちゃったらもう、他のフレンチトーストなんて食べられないですよ―――!?」


「褒めすぎだと思うけど、そんなに気に入ってくれたならコッチこそ嬉しいよ」


「服とか弾け飛んだほうがいいです!?」


「装備もったいないし、リアクションのためにそこまでしなくても」


 ハークばっきゃろうッ!!


 ……それはともかく、付け合わせの〝天使の蜂蜜〟も加えて(祝福倍加)更に幸せにひたるラムが、目を輝かせて称賛を呟いた。


「す、すごいですっ、ハーク師匠っ……アタシも趣味で、そして今現在は必要に迫られて家事をするんですけど、こんなに美味しくなんて出来ないですっ! 材料もいいのかなぁ、すごいなぁ……」


「ラムの境遇に若干の闇を感じて気になるけど……実際、俺自身には料理スキルなんて無かったから、〝料理人のフライパン〟を手に入れるまでは大変だったし、かなり吟味したよ。ちなみに途中、〝料理人の殺人包丁(攻撃力50、人間特攻、料理スキル付与)〟とか拾っちゃったりしてさ、ハハッ」


「料理の意味が変わってきません? 怖くないです?」


「怖いよ。だから使えず速攻で捨てちゃったし。……まあでも、変なモノ拾っちゃうコトもある分……良いモノが手に入った時は、なんか嬉しくなるよな」


「ああ、言われてみればハーク師匠、〝最高級のパン〟とか鑑定した時テンションおかしかったですもんね……ランダム生成にハマっちゃってるのかな、でもまあ生活に必要なことでしょうし、う~ん……というか、この調理済みの前の(★4)とかって何です? やっぱり出来の良し悪しで変わるとか?」


「いや、全然関係ないよ。全く同じ材料・手順・料理スキルで作って、全く同じ味でも★1と★5(最大値)になったりするし。ただ鑑定して見ると、強化効果が上がってるコトあるから……まあ★の数はランダムで付くんじゃないかな?」


「こんなとこにまでランダム生成の影響が。う、う~ん、何だか雑な仕組みみたいで、なんだかなぁ、って思っちゃいますけど……」


 ランダム生成ダンジョンで暮らすハークの珍妙な生きざまに、何と言えば良いのかと悩むラム――だが、蜂蜜付きフレンチトーストを食べつつ。


「でもまあ、何だっていいですよねっ、おいしければっ♪

 ん~~~っ幸せぇ~~~……♡(状態異常:幸福)」

※幸福:LUK=+20 強化=神聖・精神力 デメリット=危機感の欠如


 見ているほうもなごみそうなとろけ顔で、幸せそうに食事を続けるラム。


 そんな彼女を見て〝うんうん〟と頷きつつ、ハークが今日の予定を口にする。


「うんうん、約束通り幸せな朝にできて、よかったよかった。……じゃあ食べ終わったら、一番奥の五階層に住んでる、に挨拶へ行こうか」


「もんむ、もんむ。わあ、このダンジョンって全五階層なんですね、冒険者ギルドとかでも知られてない情報です。……あのあの、主って《異次元の魔女》っていう?」


「ああ、そう呼ばれてるんだっけ。じゃあ、そうなんだろうな」


「なるほど~! もんむ、もんむ………………」


《異次元の魔女》―――この常識外れのランダム生成ダンジョン、即ち《異次元の迷宮》を創り出した張本人にして。


 無尽むじんの魔力と凶悪性を持つと各国で噂され、討伐対象に指定する国もあるという――そんな恐るべき存在に、挨拶へ行くと聞かされ。


「もんむ、ごっくん。………………………。

 え、えええええええっ!!?(幸福解除)」


 少女剣士ラムは、しっかりフレンチトーストをしっかり呑み込んでから、甲高い声を上げるのだった。

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