第二章 恐るべきランダム生成ダンジョンの主――《異次元の魔女》クロエ=W=スラスト

第10話 ランダム生成ダンジョン料理!? ……できらぁ!!

 果たして、ハーク=A=スラストが少女剣士ラム=ソルディアと出会い、一夜を過ごした(やや語弊ごへいアリ)後の朝であるが。


 パチッ、と眼を開いたハークが、伸びをしつつ身を起こすと――


「ふわぁ……いやあ、やっぱイイな〝安眠のナイトキャップ〟。寝起きの爽快感が段違いだ、前に運よく拾えて良かっ」


「ドウモ……オハヨウゴザイマァス……ハーク師匠……」


「うわビックリした。どうしたんだラム、早いな。昨日は疲れてただろうに……何だか朦朧もうろうとしてる気がするし、ちゃんと眠れてないんじゃないか?」


 ハークは言葉ほどビックリしているように見えないし、ラムは朦朧としているというか悶々もんもんとしていたというか――寝起きからちょっぴりツッコミカロリーが高すぎて胸焼けしそうだが。


 さすがに今はバスタオル姿でなく、軽装に着替えているラムが、とにかく、と発言するのは。


「いえまあ、いいんですよ別に、いいんです。冷静になって考えてみれば(混乱回復)出会って初日にそんな関係になるなんて、文字通り性急すぎますし? むしろハーク師匠はオトナですよ、アタシを気遣ってくださったんですよね~?(状態異常:乙女心の憤慨オコ♡)」


「そんな関係ってなんだろう? 出会って初日に師弟関係になってる時点でも、相当だと思うんだけどな……まあいいか。それより約束通り……幸せな朝を迎えさせてやる、って話だったよな?」


「現時点でかなり殺伐さつばつとした朝なんですけど……えっ? ……ま、まさか、本番はこれからっ……な、なんという緩急、これがオトナの駆け引き……!?(混乱再発)」


 少女剣士ラム、混乱耐性が低い気はする――が、ハークは相変わらずの寝間着姿で、ベッドから立ち上がりつつ至って冷静に話を進める。


「さて、それじゃ……昨日ラムが手に入れた〝最高級のパン〟を使って……」


「やややっぱりパンを使った特殊なプレイを!? 初めてがいきなりそんな奇特な体験なんて、アタシどうなっちゃうんでしょう――!?」


「俺が前に手に入れた、この〝天使の蜂蜜(祝福=倍加)〟を……」


「はっははは蜂蜜を!? まさか、それを塗って……ええーっどっちにですかどっちが塗られちゃうんですか師匠ねえ師匠―――」


「ちょっと話が進まないから、この〝鎮静ちんせいの薬草(回復=混乱・狂乱・魅了・体力+20)〟食ってくれる?」


「もしゃもしゃ、ごっくん。ふう……この〝天使の蜂蜜〟も深く考えたら、天使が採った蜂蜜なのか蜂蜜自体が天使なのか、よく分からないんでしょうねぇ……怖いですねぇ……」


 ハークの英断により、一瞬で鎮静化したラムがツッコむと――〝よし〟と頷いたハークが、改めて説明しつつキッチンに入る。


「まあ詳細はともかく、この〝天使の蜂蜜〟が一番美味かったからさ。天使と呼びたくなるような味、って意味であって欲しいところだよな。で……こちら〝料理人のフライパン(料理スキル付与・攻撃力25or防御力15)〟を装備しまして」


「料理まで装備で補うなんて、さすがハーク師匠、ランダム生成ダンジョンを十全じゅうぜんに活用してるんですね……!」


「まあ10年も住んでれば、少しはね。ちなみに〝油のフライパン〟っていうの手に入れたコトあって意気揚々と使ってみたんだけど、火にかけた瞬間に大炎上してエラい目にあったよ。まさかフライパン自体が油で出来てるとはな……っと、まあそれはともかく、〝永遠の種火(永続効果)〟で火を起こし、フライパンを熱しつつ」


 言いながらハークが、調味料を納めた棚を開き、中から取り出したのは。


「こちら〝幸せのバター(幸運付与)〟をフライパンに溶かして広げつつ……〝聖域のミルク(神聖・闇属性への耐性付与)〟と〝神獣の卵(全ステータス+50※卵の)〟をかき混ぜたものに……パンの内相クラム(白い部分)を切り分けて浸しまして」


「なんだかヤバそうな二つ名がガンガン出ている気はしますが、ツッコんでいるとキリがないのでスルーするとして……わあ、なんだか嗅いだことのないくらい良い香りが広がって、匂いだけでも幸せになっちゃいそうです……♡」


「そしてしっかり浸したパンを……フライパンのバターが溶けた所で焼き上げるッ。表裏に軽く焼き目が付いたら皿に移していき、それを何度か繰り返しまして……」


 手際よく調理を進め、全工程を終えたハークが、皿を食卓に移しながら叫ぶ。


「さあ、コイツが完成品―――ランダム生成ダンジョン料理、ご賞味あれッ!」

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