第2話 ハーク=A=スラスト、超高難度ランダム生成ダンジョンに住んでるんだってよ

 さて、魔物の脅威も今のところは過ぎ去り、少女剣士ラムが寝間着青年ハークに問いかけるのは。


「あ、あのあの、ハーク師匠は、どうしてこのダンジョンに? もしかして師匠も、冒険者なんですかっ?」


「その師匠っていうの、確定なのか? ……うーん、いや、別に冒険者じゃない。俺はここに住んでるんだ」


「そうなんですか! ……すいません、ちょっと気持ちの整理しますね! うーん、ううん……? ごめんなさい、住んでいる、って……どういう意味で……?」


「いや、そのままの意味で、住んで生活してるんだ。あとダンジョンに見えるのは否定しないけど、ここ俺のだから」


「なるほど~! ふ~、よ~しっ。実家、ご実家……すいません、ちょっと……よく分からないですね……ええと、詳しくお伺いしても……?」


 ラムは頑張って理解しようとしているようだ、が、残念ながら白旗を挙げる。

 一方ハークは、寝間着姿の割にはシャッキリと目が覚めた口調で答えた。


「うちの実家は故あってと化して、結果、元からここに住んでいた俺は、半強制的に余儀よぎなくされたんだ。運次第だけど、着るものや消耗品、食べ物なんかも出てくるし、何とかなってるよ。まあ全階層の構造が0時にランダム変化するの、地味に面倒だけど」


「らんだ……ランダム生成、ダンジョン? あのあの、このダンジョン……《異次元の迷宮》って、噂では入るたびに構造が変わるって聞いたんですけど、それが……ランダム生成ダンジョン? っていうのだから、なんですか?」


「うちの家、《異次元の迷宮》とか呼ばれてるんだ、なんかすごい複雑。まあでも、大体そんなトコかな。一年くらい前に入り口が表に出現してから、冒険者とか来るようになったけど……誰も数時間と滞在できたコトないんだよな」


「ちょ、超高難度ダンジョンとしても有名ですから。でも師匠の言い方だと、一年以上前から住んでるんですよね……あのあの、実際どのくらい……?」


くらいかな」


「じゅうねん」


 ちょっと想像以上の期間だったのか、またも呆然としてしまうラム。


 そんな少女剣士に、ハークは〝今度はこちらの番〟とばかりに問いかけた。


「それで、ええと、キミは……」


「……あっ! アタシのことはラムか、かわいい我が弟子とか呼んでください!」


「結構ぐいぐい来るよねキミ。じゃあ……ラム? ラムは、どうしてうちの家……部外者から見れば《異次元の迷宮》なんて呼ばれてる高難度だとかのダンジョンに来たんだ? 見たところ新米冒険者っていうか、経験も低そうだけど……迷い込んだとかでなければ、何か事情でもあるのか?」


「あっ……は、はい。あのあの、大した事情じゃなくて、恥ずかしいですけど……」


 恐縮しつつ上目遣いで言うラムに、〝それでも構わない〟とハークが促すと、彼女は素直に事情を明かして――


「アタシの家系、元は貴族だったんですけど……当主の父が政争にビックリするくらい弱くてしたたかに没落しちゃって、貴族位を剥奪はくだつされて領地も取り上げられちゃって、ふふっ。もうスラム落ちするか奴隷にでもなるか……もしくは冒険者として一攫千金に一縷いちるの望みを託すか、というところで冒険者の道を選んだんですっ」


「思ってた以上に重い大した事情が出てきて、ちょっと情緒の整理が追いつかないよ俺。そう、そうなのか……大変な境遇だったんだな……」


「い、いえいえ、ついさっきピンチだったアタシが言えることじゃないですけど、冒険者って気ままで楽しいですからっ。それに……十年以上も超高難度ダンジョンに住んでるっていうハーク師匠に比べれば、アタシの境遇なんて全然っ」


「いやまあ、慣れればそんなに大変でもないし、割と気ままで……ああ、なるほど……ラムも冒険者の生活は、そういう風に適応した、っていう話なんだな。……お互い、他の人から見れば大変なのかもな」


 何だか妙なところで共感が発生してしまう、ハークとラム。

 だがハークは続けて、渋い顔で少女剣士の〝弟子入り〟について言及した。


「でもなぁ……俺はここで生活していく上で、必要に迫られてスキルを身に付けた感じだから……剣士のラムに教えられるコトなんて、何も無いと思うぞ?」


「えっ……そ、そんなことないですっ! ハーク師匠の剣技、本当にすごかったですっ。もう目にも止まらないくらい速くて、強くてっ……」


「それ剣技っていうか、とにかく力任せに振って、出来るだけスピードが出るよう斬っただけなんだよ。この長剣だって、コンスタントに性能が発揮しやすいから使ってるだけだし。……うーん、そうだな、言葉で説明するより……俺がここで生活していく上で身に付けたスキルっていうの、実際に見せようか」


 言いながらハークが辺りを見回し、何か見つけたのか通路の床を指さすと。


「えーと……おっ、ちょうどイイところに。ほら、あそこに落ちてるモノ、見えるか?」


「ふえ? えっと……あ、はいっ。……え、でも、あれって……」


《異次元の迷宮》と呼ばれる超高難度の、ランダム生成ダンジョン。


 その通路に、無造作に置かれていた―――そのアイテムとは。

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