第2話 刃の呪い

夜が明け、重苦しい雰囲気の中で三田村義隆は目を覚ました。山下家の静寂が彼を包み込み、昨夜の出来事が現実だったかどうかを確かめるかのように、自分自身に問いかけた。


朝食の後、三田村は再び書斎に足を運び、天影丸をじっくりと観察した。刀の美しい刀身には、不気味なまでに精緻な彫刻が施されていた。彼は、その彫刻が何かを語りかけているような気がした。


「この刀に隠された秘密を解明しなければならない…。」


三田村はその日、京都にある古い寺院を訪れることにした。そこには、天影丸の製造に関する古文書が保管されているという情報を得ていたのだ。


寺院に到着した三田村は、住職に出迎えられた。住職は、彼の話を聞いて眉をひそめた。


「天影丸ですか…。その刀については、私たちも忌まわしい伝説を知っています。」


住職は古い巻物を取り出し、三田村に見せた。巻物には、天影丸が製造された過程と、その刀が持つ呪いについて詳しく記されていた。


「この刀は、戦国時代に作られたもので、その刃は戦場で多くの血を吸いました。刀鍛冶は、その刃に魂を宿すことで、無敵の武器を作り出そうとしましたが、結果として邪悪な力を宿してしまったのです。」


三田村はその話を聞きながら、刀の背後にある深い闇を感じ取った。


「では、どうすればこの呪いを解くことができるのでしょうか?」


住職はしばらく考え込んだ後、静かに答えた。


「呪いを解くためには、刀が最後に切った人物の魂を鎮める必要があります。そのためには、その魂が未練を残している場所に行き、儀式を行うことです。」


三田村は、山下京介の魂が未練を残している場所――彼の自宅に戻る決意を固めた。


夜、三田村は山下家に戻り、明子に儀式について説明した。明子は最初は恐れていたが、夫の魂を鎮めるために協力することを決意した。


儀式が始まると、家の中には異様な雰囲気が漂い始めた。天影丸を中心に、三田村と明子は古い経文を唱え始めた。その瞬間、刀の刃が異様な光を放ち、周囲の空気が震え始めた。


突然、刀が激しく揺れ動き、まるで生きているかのように跳ね回った。三田村は必死に刀を押さえつけ、経文を唱え続けた。


「京介さん、あなたの魂を鎮めます。どうか、この呪いを解き放ってください!」


その叫びが響いた瞬間、刀の光が一層強くなり、そして静かに消え去った。部屋には再び静寂が訪れ、刀はまるで何事もなかったかのように静まり返っていた。


「呪いは解けたのか…?」


三田村は深い息をつきながら、刀を見つめた。しかし、その目にはまだ疑念が残っていた。


**次回予告:** 呪いが解けたかに見えた天影丸。しかし、三田村は新たな謎に直面する。刀が持つ本当の力とは何か?そして、新たな持ち主に襲いかかる恐怖とは?次回、「刃の復讐」、お楽しみに。

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