【完結】魂の刃(たましいのやいば)

湊 マチ

第1話 闇に潜む刃

霧が立ち込める静かな夜、名探偵三田村義隆は、彼の事務所で依頼主を待っていた。ドアが静かに開かれ、黒い服に身を包んだ女性、山下明子が足早に入ってきた。彼女の目には、恐怖と悲しみが入り混じった複雑な表情が浮かんでいた。


「三田村先生、夫が…夫が死んだのです。」


彼女の震える声に、三田村は静かに頷いた。「詳しく聞かせてください。」


山下京介、明子の夫であり、有名な武器コレクターが、昨夜自宅で謎の死を遂げた。彼の喉には深い傷があり、致命傷となったその傷跡は、まるで冷たい刃物が容赦なく切り裂いたようだった。


「彼のコレクションの中に…一本の刀がありました。『天影丸』と呼ばれる古い日本刀です。あの刀が何か関係しているのではないかと思うのです。」


三田村はその名前に反応した。天影丸――伝説の呪われた刀。持ち主に不幸をもたらし、数多くの血を吸ってきたという噂があった。


翌日、三田村は山下家を訪れた。京介の書斎は、まるで時間が止まったかのように静まり返っていた。彼のデスクには、多くの書類と共に、一本の美しい日本刀が置かれていた。それが、天影丸だった。


三田村が刀を手に取ると、冷たい感触が指先に伝わってきた。刀身に浮かぶ古い刻印が、彼に不気味な予感を抱かせた。


「これはただの刃物ではない…。」


その夜、三田村は自宅に戻り、天影丸についての資料を調べ始めた。古い文献や伝説、そして刀が関与しているとされる未解決の殺人事件が次々と彼の目に飛び込んできた。


刀の持ち主は皆、不可解な死を遂げ、その背後にはいつも天影丸の影があった。三田村は次第に、刀がただの物質ではなく、邪悪な意志を持っていることに気づいていった。


次の日、三田村は山下家を再訪した。彼は明子に、刀を専門家に見せることを提案したが、彼女の顔には恐怖が浮かんでいた。


「いいえ、先生。あの刀を持ち出すのはやめてください。夫があれに触れてから、何かが…何かが家に潜んでいるような気がするのです。」


その夜、三田村は山下家に泊まることを決めた。暗闇が家を包み込む中、彼は何かが動く気配を感じた。影の中で輝く刀の刃が、彼に冷たい視線を投げかけるようだった。


「天影丸…お前の呪いを解く方法を見つけてやる。」


心の中で決意を固めた三田村。しかし、その背後に立つ刃の影は、彼の決意を嘲笑うかのように揺れていた。


夜が更けるにつれ、三田村は次第に刀の呪いに引き込まれていく。果たして、彼はこの恐怖の連鎖を断ち切ることができるのか? それとも、天影丸の新たな犠牲者となるのか?


**次回予告:** 三田村は刀の秘密を解き明かすため、更なる調査に乗り出す。しかし、刀の呪いはますます強力に彼を襲い、危険な罠が待ち受ける。果たして彼はこの恐怖の連鎖を断ち切ることができるのか?

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