第27話:地球へ来て三度目の魔法。
陸の治療方法は放射線治療がメインになるようだった。
確実に助かると言う保証もなく、助からない可能性も充分あった。
病院にいてもなにもできないので、真由美さんは先生と女の子ふたりには先に帰ってもらった。
真由美さんとメガネとルフィアも、とりあえず山の家に帰って来た。
「陸はどうなるのかしら・・・」
「おばさん、陸はきっと大丈夫ですよ」
メガネのそれは、なんの確信も説得力もない発言だった。
ルフィアに嘆いている暇はなかった。
真由美さんは晩ご飯の支度をしたが、誰も食事が喉を通らなかった。
ルフィアは、こんな時にこそ自分の魔法を役立てる時だと思った。
「私・・・私が陸を救います」
ルフィアは真由美さんにそう言った、そう誓った。
ルフィアの魔法を一度見ている真由美さんはルフィアの魔法に期待した。
ここはワラをもすがる気持ち。
陸を助けられるならと、真由美さんはルフィアにすべてを託すことにした。
ルフィアは夜の間に病院に潜り込んで病室で自分の魔法を使って陸を救う
つもりでいた。
そう決心したルフィアはその夜「俺も一緒に行く」と言ってきか ない、メガネを
引き連れて、真夜中に再び病院へ向おうとしたら、真由美さんまで私も家にいても
落ち着かないから、ふたりと一緒に病院へ行くって言うので三人はジムニーに
乗って病院へ向かった。
病院へ着くと、ルフィアは真由美さんに車で待機するように告げてメガネだけ
連れて救急外来の夜間入り口に向かった。
病院の夜間入口の受付には電気がついていて、こっそり覗くと ガードマンが
ひとりいたが、受付の下を腰をかがめて通るとガー ドマンからは見えない。
まずそこをクリアした。
問題はナースステーションだった。
手前で様子をうかがうとナースステーションには夜勤の看護師さんが三人いた。
そこもナースステーションを囲ってるカウンターに隠れて腰をかがめて見つからないようにして素通りした。
そしてふたりは無事、陸の病室に入ることができた。
陸の部屋が大部屋じゃなく個室だったのも幸いした。
陸の様子を伺うと、陸は眠っていた。
そのほうがちょうどいいとルフィアは思った。
眠っていてくれたほうがいい。
陸の掛け布団を、そっと下にずらしたルフィアは、 自分の持てるすべてを
陸に捧げるつもりだった。
「俺、看護師が来ないか入り口で、見張ってるか ら終わったら言って」
ルフィアはうなずいて、陸の胸のあたりに両手をかざした。
するとルフィアの両手からピンク色の淡い光が差し始めた。
それは徐々に大きくなって陸の全身を包みこんだ。
途中看護師が巡回して来たが、ルフィアとメガネはカーテンの裏に隠れて
やりすごした。
部屋が薄暗かったこともふたりには幸いした。
それからルフィアのヒーリングは二時間以上は続いた。
もし外から陸の病室を見た誰かがいたとしたら、そこでパーティーかなにかやってるように見えただろう。
ルフィアは陸を助けるため、全精力を注いだ。
生半可なヒーリングではなかった。
病気の根源を断つのだ・・・それは手練れた魔法使いでさえ自分の命を落とす可能性もあった。
(お願い、地球さん、また私に力を貸して・・・)
つづく。
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