第25話:地球へ来て二度目の魔法。

「陸だけど・・・分かったって言ってたわよ」


「ごめんね、陸・・・」


「いくら魔法使いでもひとつのことを同時にはできないわよね」


そう言いながらパンの様子を見ていた真由美さんが言った。


「あ、破水したみたい・・・」


「もううぐ生まれるわよ」


「がんばってね・・・・パン・・・がんばれ」


すると少しづつ赤ちゃんができてきたようだった。


「ほら、もう少し・・・がんばって」


パンは一声鳴いたと同時に赤ちゃんが出てきた。


真由美さんは、すぐにお湯に浸したタオルで赤ちゃんを綺麗にした。

でも赤ちゃんはぐったりしたまま、なんの反応もなかった。


「この子、息してないわ・・・」


真由美さんはマウストゥーピースで赤ちゃんに空気を送ったが、

それでも赤ちゃんヤギは息をしなかった。


「どうしよう・・・息をしてよ・・・お願いだから」

「死なないで・・・」


「あの・・・まだ間に合うかもしれません」

「赤ちゃんを私に貸してください」


そう言うと真由美さんは動かない赤ちゃんをルフィアに渡した。


「どうするの?」


「私の魔法で救えるかもしれません・・・」


そう言うとルフィアは右手を赤ちゃんヤギにかざした。

柔らかい光が赤ちゃんヤギを包みこんだ。


「お願い息をして・・・」


そう言うとルフィアは治癒に集中した。


「地球さん、少しでいいから私にマナを分けて・・・」


そう言うと周りの空気がキラキラ輝き始めた。

真由美さんは目を丸くした。


光とキラキラした輝きがルフィアごと赤ちゃんヤギを包み込んだ。


しばらくすると、なんと赤ちゃんヤギが、ミエ〜って一声鳴いた。


「うそ・・・」


真由美さんは言葉がでなかった。

赤ちゃんヤギはルフィアの腕の中で元気良く動き出した。


「もう大丈夫と思います」


ルフィアはそう言って赤ちゃんヤギを真由美さんに返した。


「この子、息してるわよ」

「こんなことって・・・?」


真由美さんはルフィアの魔法をじかに見て感激した。

あまりの奇跡に真弓さんの瞳から涙が溢れ出た。


魔法なんて言っても今まで一度だって見たことがない真由美さんだった。


「よかった・・・ほんとによかった」

「奇跡ね・・・あなたほんとにすごいわねルフィア・・・」


「この子、女の子ですね・・・可愛い名前つけてあげなきゃですね」


ルフィアは小さな命を救った。


「私、自信はなかったんですけど、実は治癒系の魔法使うの学校の実習

以外初めだったんです」

「普通は使うことなんて滅多にありませんから・・・」

「だから、この子を救えることができてよかったです」


赤ちゃんヤギは早速お母さんヤギのオッパイを飲んでいた。

安心した真由美さんとルフィアは家に入って一息ついていた。


そうこうしてるうちに陸がヒーヒー言いながら坂を登って帰って来た。

その後から獣医さんも来てくれた。

獣医さんには黙っていたが、ルフィアの活躍を真由美さんは陸にだけ話した。


何もすることがない獣医さんは赤ちゃんヤギに聴診器だけ当てて、


「心臓も元気で打っとるし・・・ま、大丈夫じゃろ」


そう言って帰って行った。


陸とルフィアはヤギ小屋のいた。

赤ちゃんヤギは、まだパンのオッパイを吸っていた。


「ルフィアのおかげで赤ちゃんヤギが救われたね」


「よかった、私の魔法が役に立って」

「せっかくだから赤ちゃんヤギに名前をつけてやってよ」

「命の恩人のルフィアがつけてやったらこの子も喜ぶよ」


「え〜私が・・・?」


「うん、つけてやって?」


「この子、女の子だから・・・じゃ〜アリエラってダメかな」


「アリエラか・・・いいと思うよ・・・まるで天使みたいな名前だね」


つづく。


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