第24話:ヤギの出産。

山の崩落事故から1ヶ月・・・現場の道路もほぼ軽四が通れるくらいまで

修復されていた。

その間は陸もルフィアも特になにもなく平和に毎日を仲良く過ごしていた。


その朝、早く真由美さんは忙しくしていた。

陸はすでに学校へでかけていた。


一番遅く起きたルフィアは階段を降りると、真由美さんが忙しくしていたので、

どうしたのかと声をかけた。


「どうしたんですか真由美さん・・・?」


「あ、おはようルフィア」

「ヤギがね・・・パンが・・出産・・・赤ちゃんが産まれそうなの」


「そうなんですか?」


「なにかお手伝いすることないですか?」


「今ね、獣医さんに連絡取ってるんだけど留守電になってて出ないのよ」


「獣医さんはもう間に合わないかもしれないわね」

「そうなったら、うちで取り上げるしかないわ・・・」


「私もヤギの出産なんて立ち会ったことないです」


「そうね、パンもベビーの出産ははじめてだからね・・・だからパンには

自力でがんばってもらうしかないわね」


「あなたは家にいていいわよ」

「いてもらってもすることないと思うから」


「でも・・・私もじっとしていられません」

「じゃ〜一緒に来て・・・ベンジャミンの様子を見ててくれる?」


「なんかね、自分の奥さん異変を感じてるのか、そわそわ落ち着かないのよ」

「興奮してるみたいだから、相手してやってくれる?」


「はい、分かりました」


そう言ってルフィアはヤギのいる小屋に急いだ。

真由美さんはバケツにお湯を入れて、あとからヤギ小屋に来た。


見るとパンが苦しそうにしていた。


「まだみたいだけど・・・いつ破水するか分からないからね」

「無事に赤ちゃんが生まれるといいんだけど」


ルフィアはベンジャミンを落ち着かせようと撫でたり話しかけたりして

面倒を見ていた。

なんとなくこの雰囲気を感じとるのかベンジャミンは落ち着かなかった。


「ごめん、もう一回獣医さんに連絡してみるから・・・」

そう言って真由美さんは携帯から獣医さんへ連絡を入れた。


どうやら獣医さんと繋がったみたいだったけど、どこかの牛が出産まじかで、

そっちで忙しいらしかった。


ヤギより一家の生活がかかってる牛のほうが優先らしかった。


「もう獣医さんはあてにはできないわね」

「私たちで、がんばるしかなさそうね」

「お昼までに産んでくれると助かるわね・・・じゃないと何もできないからね」


「パンちゃん大丈夫でしょうか?、ずいぶん息が荒いですけど」


「そうね、ヤギの出産なんて初めての経験だからね」

「・・・私はヤギじゃないから・・・ヤギの気持ちはヤギにしか分かんないわよね」


ルフィアはクスッと笑った。


パンは昼を過ぎても出産しなかった。


「そのうち陸が帰ってくるわね」

「ルフィア・・・陸を迎えに行っていいわよ」


「でも、パンのことも気になるし・・・どうしよう」


「そうね、私もひとりじゃ心細いから、ルフィアがいてくれたほうが助かる

んだけど・・・」

「陸には悪いけど、連絡してひとりで帰ってもらいましょ」


「陸はずっと私が帰り道を補佐して帰ってたから久しぶりにひとりで

帰るって・・・倍以上キツいんじゃないかな・・・」


「たまには自力で帰って来たらいいのよ・・・ルフィアに甘えっぱなしでしょ」


真由美さんは陸に連絡して、今日はひとりで帰るよう言った。


「あ、陸・・・今日ルフィアは学校へ迎えに行けないから、ひとりで帰って来て」


「え?なんでって?」

「いいえ、ルフィアは元気よ」

「そうじゃなくてパンが今日、赤ちゃん産みそうなのよ」」


「そうそう・・・夕べから怪しかったでしょ」

「そういうことだから・・・」

「じゃ〜お願いね」


つづく。



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