第22話:魔法使いの予感。
次の日は昨日のお天気と打って変わって空の雲行きが怪しかった。
ニュースでは熱帯低気圧が発生して、いずれ台風に変わるだろうと予報していた。
陸の家の地域も一週間立たないうちに暴風波浪注意報が出た。
孤立している宮前家は足止めを食らった。
暴風のせいで森の木々が軋んだ。
幸いにも食料は確保していたので食べ物には不自由はしなかったが
陸は学校にも行けず自宅警備員をしていた。
まあ、ルフィアがいたから退屈と言うことはなかった。
台風の直撃はまぬがれたが、この一帯はひどい集中豪雨に見舞われた。
一晩中吹き荒れた台風も過ぎ去ってしまえば、かならず青空が戻って来る。
次の朝、昨日の出来事など、なにもなかったように穏やかな朝だった。
台風が過ぎ去るのを待ちかねたように陸はルフィアに見送られて自転車に
乗って学校へでかけた。
「じゃあ、行ってくる」
「いってらっしゃい、気をつけてね」
「夕方迎えにいくから・・・」
陸は、分かったってふうに後ろ向きに手を振った。
ルフィアは陸が遠ざかっていく姿をずっと見送っていた。
陸が見えなくなるまで・・・。
陸を見送って家に入ろうとしたルフィアの顔に、 いつになく冷たい風が横切っていった。
その瞬間、ルフィアは不吉な胸騒ぎを覚えた。
遠ざかっていく陸と、もうこのまま二度と会えないんじゃないかって気がした。
さっきまで陸が近くにいたから、ルフィアの予感はより一層強く感じた。
(陸・・・行っちゃダメだ・・・)
そう思う間もなくルフィアは中に舞い上がっていた。
そして 陸の元へ超特急で飛んだ。
「り〜〜〜く〜〜〜」
陸はふっと背後からルフィアの声が聞こえた気がした。
「空耳か?・・・今、ルフィアの声がしたような・・・」
「り〜〜〜く〜〜〜」
今度は陸の耳にもルフィアの声がはっきり聞こえた。
陸は自転車を止めて振り向くと、すぐそこに飛んでくるルフィアが見えた。
ルフィアは陸を飛び越えると、自転車の前に降りたった。
「陸、このままUターンして、家に帰って」
「なに?どうしたの?」
「私、嫌な予感がする・・・」
「陸の身になにか悪いことが起きる気がするの」
「大袈裟だな・・・なにも起きないよ」
「俺、元気だし・・・どこも悪くないし・・・」
「きっと、そう言うんじゃないと思う」
「お願い、私の言うことを聞いて・・・信じて」
「何だか分かんないけど胸騒ぎがするの」
「胸騒ぎって・・・」
「分かった・・・君を信じるよ」
ルフィアが言うんだから、と陸は素直に彼女に従った。
つづく。
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