第17話:ベリーショートとショックな出来事。

ルフィアは歩くのをやめて空を飛んで街に出た。


美容室に行く前に、はじめて見る町も少しは知っておきたかったらから、

人のいない路地裏に降りて、賑やかな通りや商店街をもの珍しそうに散策

して回った。


キョロキョロ歩いているうち、偶然お目当の美容室を見つけた。


お店の名前は「Mon bébé」(モン・ベベ)


「あ、ここだ・・・」


ルフィアは、おそるおそるお店のドアを開いた。

シンプルなデザインのお店で、ほとんどがモノクロ でまとめられていた。

お店には、まだお客は誰もいなかった・・・ 平日の朝というせいもあった

んだろう。


「いらっしゃいませ」


上から下まで黒ずくめのネエさんが言った。

品があって綺麗な人だった。

まるで、その人の方が魔法使い・・・魔女みたいだった。


「あの店長さんですか?」


「そうですよ」


「私・・・宮前 真由美さんの紹介で来ました・・・ ルフィアと言います」


「はいはい・・・聞いてるわよ」

「どうぞ、座って・・・」


ルフィアは言われるがままに真っ黒なレザーの洒落た椅子に座った。


「あなた・・・日本人?」


「あ〜・・・・」


ルフィアはなんて答えていいか分からなかった。


「いいのいいの、なんか日本人じゃない気がしたから・・でも外人でもないのかな」

「ハーフかな〜と思って・・・」


「目、カラコンじゃないんでしょ?」


ルフィア「え?、からこん?」


ルフィアの瞳は普通の日本人より明るいブラウンをしていた。


「あ〜いい、いい」

「さて、と・・・ショートにしたいんだって?」


ルフィアは下げていたポシェットから一枚の写真を取り出した。

笑顔で愛想を振りまいてる吉本栞の写真だった。


「こんなふうにお願いします」


「はいはい・・・ああ吉本 栞よしもと しおりちゃんね・・・わかった」


写真を見たおネエさんは、ルフィアの髪を見たり触ったりした。


「綺麗な髪ね、切るの勿体無いくらい・・・」

「本当に切っていいのね?」


ルフィアは覚悟を決めて、小さくうなずいた。

最初のハサミが入った。

ルフィアは切られて行く自分の髪を見て、少しだけ 後悔しそうになった。


(髪はカットしてもいつかまた伸びるし・・・)


おネエさんは手馴れたテクニックでルフィアの髪型をどんどん陸の理想に

変えていった。

シュートになった髪に軽いパーマをかけてくれたので、より吉本栞に近づいた。


店長「はい、どうかな・・・こんな感じ・・・?」


鏡に映った自分を見てルフィアは自分じゃない気がした。

そこにはメガネから指摘されたおさげ女の子はいなかった。


「はい、素敵です」


「見違えたわね、可愛さ倍増、よく似合ってるわ」

「長い髪もよかったけど・・・あなたはそのほうが似合ってるわ」


「ありがとうございました」


「はい、どういたしまして・・・またいらっしゃいね」

「ありがとう・・・」


ルフィアは新しい髪型がすっかり気に入ってしまっ た。

真由美さんから貰ったお金で料金を払って、お礼を行って店をあとにした。

頭がすこぶる軽くなった。


美容室を出たルフィアは真由美さんから


「美容室へ行くならパン屋さんによって食パン買ってきてくれる」


って頼まれていたので、教えてもらったパン屋さんに向かった。

駅のロータリーを回ろうとした時だった。

ルフィアの足が止まった。


駅の入り口に、学校に行ってるはずの陸が見えたからだ。


「え?・・・陸、学校じゃないの?、なんで? 」


それは、たしかに陸だった。

ルフィアは声をかけようかと一瞬思った。


でも陸のすぐそばに女の人が立っていて、陸を迎えに言った時、校舎から

陸と一緒に出てきたあの朋美って女の子と同じ制服姿だった。


(もしかしたら陸のガールフレンド?)

(私の知らないところで陸は、学校サボって同級生の女の子とこんなところで

デートしてたの?)


するとその女の子がルフィアのほうを振り向いてにっこり笑うと深々と

お辞儀をしたのだ。


ルフィアは驚いた。

なんで?って思った。


(なんで、私のことが分かるの?)


ルフィアもつられてお辞儀をしたが、どうしてその子が不可解にお辞儀をしたのか

意味が分からなかった。

ありえない光景を目にしてフフィアは動揺を隠せなかった。

ショックだったし、意味もなく悲しかった。


ルフィアはパン屋さんへ寄ることも忘れて、そのまま宮前家に帰ってしまった。


つづく。


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