第14話:地球に来てはじめての魔法。

山のはじまりに差し掛かって、さあこれから登りだっていう時になって、

陸の足は急に軽くなった。


(か、軽い・・・足が軽い)

陸は自転車の後ろからルフィアが自転車を押してくれてるのかと振り向いたが

ルフィアの姿は見えなかった。


(ルフイア・・・ どこ・・・?)


「ルフィア、どこだ?」


「ここだよ」


ルフィアは陸のすぐ上にいた。


「大丈夫だよ・・・私がサポートするから陸はペダ ル漕がなくていいよ・・・

このまま自転車ごと、おうちまで帰ろう」


陸はペダルを漕ぐのをやめた。


それなのに自転車は勝手に速度を上げて前に進んでいった。

まるで宙を浮いてるようだった。

実際には自転車は陸を乗せて少しだけ浮いていたのだ・・・。


陸はルフィアの両手から放つピンク色の淡い光が 自分と自転車を

すっぽり包んでいるのが分かった。


「魔法・・・?」

「そうだよ、ルフィアは魔法使いなんだ、忘れてた・・・」

「すごいよ・・・こんなことができるんだ」

「そうか、そうだよ・・・これが君のアイデンティティなんだ」


「ねえ、ルフィア、君ってなんでもできちゃうの?」


「できないよ・・・人をカエルに変えたり、お金だしたり・・・そういう

ことはできないの」

「あと相手を傷つけたり攻撃したりとか、そういうことはできないの・・・」

「どっちかって言うと私はヒーリング系の魔法だね・・・あとは 未来を

予知したり・・・ そういう魔法しか使えないんだ」

「魔法もいろいろあってね、魔法使いもいろいろいて選考する授業によって

覚える魔法が違うの」


「授業って・・・君の星にも学校ってあるの?」


「あるよ魔法学校・・・私は15才でめだたく全過程終了したよ」


「でも、空を飛ぶ方法はお母さんが教えたの、それは地球にいる時にね」

「空を飛べたほうがどこへ行くのも便利だし楽だからね」


「今は、光に近い速度で飛べるよ、特に宇宙は抵抗がないから・・・」

「で、陸に会いに来たの 」

「やっぱり私が来たのって迷惑じゃなかったかな?・・・」


「迷惑なんて、そんなことないよ、ルフィアが来てから家の中が明るく

なったしね」


「お母さんと二人じゃつまんないから・・・」


「つまんないって、そんなこと真由美さんが聞いたら泣くよ」


「大丈夫だよ、うちのお母さんはそんなことじゃメゲないから」


「女は弱し・・・されど母は強しってやつだよ」


「なにそれ?」


「だから・・・女性は・・・あ〜いいや、そんなこと知らなくて」


そんなことを言ってる間に、あれよあれよと坂を登ってふたりは家にたどり

着いていた。


マウンテンバイクを車の横に停めた陸にルフィアは言った。


「これから毎日学校に迎えに行くから」


「今日は嬉しかったけど、そんな無理しなくていいよ」


「私がそうしたいの・・・ね、好きにさせて」


「ああ、いいよ」


その夜、ルフィアはよく眠れた。

少しでも陸の役に立ててルフィアは嬉しかったのだ。


空を飛ぶこと以外、地球に来てはじめて魔法を使った。

ただ校舎から陸と一緒に出てきた同級生の子が少し気になるルフィアだった。

年頃の女の子の心は些細なことにも揺れ動くものだ。


つづく。


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