第13話:メガネのアドバイス。
「そう・・・じゃ、俺先に帰るから」
そう言って帰ろうとしたメガネがなにかを思いついたように振り向いてルフィアに言った。
「あのさ、余計なことかもしれないけど・・・俺からのアドバイス」
「ルフィア、今のおさげでも充分可愛いんだけど・・・」
「その髪、切ったほうがいいと思うよ」
「えっ、髪切っちゃうんですか?」
「陸はモテるからな・・・」
「ビジュアルが肝心だよ・・・見た目から攻めないと・・・」
「人は見かけより中身って言うけど最初のインパクトはやっぱり見かけ優先だろ?」
「いいこと教えてあげるよ、陸はショートの子が好きなんだ」
「ルフィアがボーイッシュになったら、あいつ喜ぶと思うよ」
「だからさ・・・思い切って髪、切っちゃえば?」
「もしダメでも髪の毛なんて、すぐ伸びるんだからさ・・・」
「僕ももっと可愛くなったルフィアを見たいからね」
「うん・・・」
「じゃ〜ね・・・俺、今日用事あるか ら・・・先に帰るわ」
「お先に・・ばいばい・・・ルフィア」
「頑張ってね、髪切ったほうが絶対イケるから・・・応援してるよ」
「ありがとうメガネさん・・・・バイバイ、またね」
帰りかけてたメガネがまた振り向いて言った。
「また遊びに行くから・・・陸の未来の奥さん」
そう言われたルフィアは照れくさそうにした。
メガネは自分の言いたいことだけ一方的にくっちゃべって帰って行った。
(おさげ・・・切ったほうがいいのかな・・・)
ルフィアは大いに悩んだ。
もう日も暮れようとする頃、校舎から陸が出てきた。
誰か女の子と一緒だった。
街灯の薄明かりの中にルフィアを見つけた陸は驚いた。
「ルフィア?・・・ルフィア、そこで何してる?」
「陸を待ってた・・・」
「来なくていいのに・・・でも、ありがとう」
「待った?」
「そうでもない・・・」
「帰ろう」
陸と一緒に出てきた女の子は、陸に向かって、
「お出迎え?・・・宮前くんも隅に置けないね・・・私先に行くわ・・・
じゃあね・・・また明日」
その子は、そう言った。
「ああ、またな朋美・・・」
朋美と呼ばれた子は、ルフィアを見て軽く会釈して帰って行った。
「あの・・・あの子と仲いいの?」
「まあ、同級生だから・・・」
「なんで?気になるの?」
「ちょっと・・・だけ・・・」
「あはは・・・何もないよ、普通の友達だよ・・」
「そう・・・?」
揺れる乙女心・・・ルフィアには女の子が陸の隣にいるだけで 気になって
しょうがないのだ。
「あ、帰りの登りは私が後ろから押してあげるからね」
「いいよ、自力で帰れるから」
「女の子に後ろを押されて帰ったって誰かに知られたら笑い者だよ」
陸はルフィアが後ろから押すって言った意味をそのまま受け止めて
しまったようだ。
たしかに朝と違って疲れた体で坂道を登るのはキツかった。
それを陸は毎日続けているのだ。
山のはじまりに差し掛かって、さあこれから登りだっていう時になって、
陸の足は急に軽くなった。
(か、軽い・・・足が軽い)
陸は自転車の後ろからルフィアが自転車を押してくれてるのかと振り向いたが
ルフィアの姿は見えなかった。
つづく。
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