第2話 運命の日
若干二十代で営業部長に昇進し、将来の出世を約束されていたと言っていい
独立し、起業するためだ。
親の影響で、元々は法律家を目指して法学部で学んでいた彼だったが、その道は中途で諦めていた。
司法試験合格のために何年も勉強ばかりしていられないと思ったからだ。
勉強自体は嫌いではなかったが、早く社会に出て成長したい気持ちを抑えることができなかった。
その後、彼はウェブマーケティング会社に営業として就職する。
創業十年にも満たない若い会社だ。
最初の一年目は、慣れないことや知らないことばかりで、中々成果を上げることができなかった。
だが二年目。
早くも秘めたる才能が開花する。
持ち前の論理的思考と本人の努力の甲斐も相まって、驚異的な業績を上げた。
そこからはまさしく破竹の勢い。
やがて徳富大成は、まだ二十代後半にして、誰もが認める若き営業部長になったのである。
そして......運命のあの日を迎える。
同僚たちとの送別会を終え、将来の成功を胸に誓い、熱い想いで帰り道を歩いている時だった。
「危ない!!」
青信号の横断歩道に、勢いよくトラックが突っ込んできたのだ。
歩行者たちは慌てて歩道へ退いていった。
ところが、一人の足の悪い女性が、バランスを崩してその場にへたり込んでしまう。
誰もがそう思った時。
ドン!と何者かが彼女を突き飛ばして、トラックの軌道上から逸らした。
それは結果的に、身代わりとなる行為だった。
身代わりとなったのは、徳富大成。
「あ、俺、死んだ......」
目前に迫りくるトラックのライトに照らされ、心の中で呟いた時。
不思議なことが起こる。
「......あれ?」
生きている?
なぜだ?トラックに轢かれたんじゃないのか?
いや、これは死後の世界ってやつか?
上下左右、白いだけの空間。
そうか。
俺は天国に来たんだな。
地獄じゃなくて良かった......。
などと考えているところに、その者は現れた。
「ようこそ。徳富大成様」
ハッとして振り向いた先に、その者は立っていた。
といっても、地に足を着けて立っていたのかどうかは定かではない。
「あ、貴女は、女神様??」
思わずそう口走ったのは、自然なことだった。
状況もそうだが、何よりその者自身が、そういう
神々しく、神秘的で、美しい。
「
美しき女神は微笑した。
「てんせい......めがみ??」
阿呆みたいに
まるで理解が追いついていない。
「今から貴方に、説明しておかなければならないことがございます」
「は、はあ」
「まず、貴方自身のことです」
「俺自身のこと?」
「結論から言います。徳富大成様。貴方は生きています」
「うん......えっ??」
「あちらの世界での、最後の記憶は何ですか?」
「あちらの世界?現世ってこと?」
「違いますよ。貴方は生きていると言ったでしょう。地球という星の日本という意味です」
「そ、そんな、子どもに説明するみたいに言わないでくれよ。要するに、ここに来る直前の記憶ってことだろ?もちろん覚えてるよ。送別会で飲んだ後、帰り道でトラックに......て、あれ??生きてるってことは、俺......あの状況から助かったのか?一体どうやって...」
「私が貴方をこちらに招いたからです」
「......そ、そもそも、ここはどこなんだ?」
「ここは世界の狭間。すべてに繋がる場所です」
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