第24話 竜騎士の心得


社員旅行から戻って数日が経った。

私の日常は、表面上は何も変わっていないように見えた。


しかし、その実態は大きく変わっていた。


「如月、今日も残業か」


帰り支度をしていた川瀬が声をかけてくる。


「はい。ちょっと調べものがあるので」


「まったく。新人のくせに熱心だな」


川瀬はそう言って帰っていった。


オフィスには私と闘護部長だけが残った。


「準備はいいか」


「はい」


私たちは誰もいなくなったオフィスで向かい合う。


「では行くぞ」


闘護部長が手を差し出してくる。

私はその手を握る。


次の瞬間、私たちはオフィスから消えていた。


目を開けると、そこは広い草原だった。


「ここが音夢か」


「ああ。ここなら誰にも邪魔されずに訓練ができる」


闘護部長の言葉に頷く。

ここ数日、仕事が終わった後にこうして音夢に来て、龍騎士としての訓練を受けていた。


「まずは基本だ。気を感じろ」


部長の言葉に従い、私は目を閉じる。

周りの空気の流れを感じ取ろうとする。


「そうだ。その調子だ」


部長の声が聞こえる。

だんだんと、周りの空気が見えるようになってくる。


「できました」


「よし。では次は」


部長が言いかけたその時、地面が揺れ始めた。


「来たか」


部長の声が厳しくなる。


「如月、今日はおまえにやってもらう」


「え?」


「心配するな。小さいやつだ。おまえにも対処できるはずだ」


そう言うと、闘護部長は後ろに下がった。


地面から灰色の塊が現れる。

鯰だ。


「如月、おまえの中にある力を呼び覚ませ」


部長の声を聞きながら、私は目の前の鯰と向き合う。


「さあ、行け!」


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