第25話 初めての戦い
部長の掛け声と共に、鯰が襲いかかってきた。
「きゃっ!」
思わず目を閉じてしまう。
「如月!目を開けろ!」
部長の声に、はっとして目を開く。
鯰が目の前まで迫っていた。
「逃げるな!向き合え!」
部長の言葉に、私は震える足を踏ん張る。
そうだ、逃げちゃダメなんだ。
鯰の目を見つめる。
すると、不思議なことが起こった。
鯰の動きが、スローモーションのように見える。
「力が目覚めたな!」
部長の声が遠くから聞こえる。
私の中に、何か熱いものが込み上げてくる。
それは、身体中を駆け巡り、やがて右手に集中した。
気づくと、私の手には光る刀が握られていた。
「その刀で斬れ!」
部長の声に従い、私は刀を振り下ろす。
刀が鯰を両断した瞬間、鯰は光となって消えていった。
「やった……?」
信じられない気持ちで、自分の手を見つめる。
「よくやった、如月」
闘護部長が近づいてきて、私の肩に手を置いた。
「これが、龍騎士の力……」
「ああ。おまえの中に眠っていた力だ」
そう言った瞬間、地面が大きく揺れ始めた。
「まさか、まだ来るのか!」
部長の声に、私は周囲を見回す。
すると、先ほどの小さな鯰とは比べものにならないほど巨大な影が、地面から現れ始めた。
「如月、下がれ!」
部長が私を後ろに押しやる。
「こいつは規格外だ。おまえにはまだ無理だ」
言い終わるか否か、巨大な鯰が完全にその姿を現した。
それは、まるで小さな山のようだった。
「くそっ、こんな大物が出てくるなんて……」
部長が歯を食いしばる。
「部長、私も……!」
「ダメだ!おまえはまだ……」
部長の言葉が途切れた。
巨大鯰が、その大きな尾で私たちを攻撃してきたのだ。
「如月!」
部長が私を抱きかかえ、攻撃をかわす。
だが、その勢いで二人とも地面に転がった。
「大丈夫か?」
「は、はい……」
立ち上がろうとする私たちに、再び鯰の攻撃が襲いかかる。
「チッ」
部長が舌打ちし、刀を構える。
その刀で鯰の攻撃を受け止めるが、その衝撃で部長の体が大きくのけぞる。
「部長!」
私は慌てて部長に駆け寄る。
「心配するな。これくらい……」
そう言いながらも、部長の額には汗が滲んでいた。
(このままじゃ、部長が……!)
焦りと恐怖で、私の心臓が早鐘を打つ。
そのとき、胸の奥底から何かが込み上げてきた。
(そうだ……私には、ジィがいる!)
「ジィ!」
私の叫び声と共に、空から蒼い光が降り注いだ。
「何!?」
驚く部長の声。
光の中から、ジィが現れた。
大きく成長したジィは、もはや子龍ではなく、威風堂々とした成龍の姿だった。
「ジィ……」
私の呼びかけに、ジィが優しく首をすり寄せてくる。
「まさか、こんなに早く……」
部長が驚きの表情を浮かべる。
「如月、ジィに乗れ!」
「え?」
「龍と騎士が一体となったとき、本当の力が発揮される。さあ、行け!」
部長の言葉に、私は迷わずジィの背に飛び乗った。
その瞬間、私の体に力が漲るのを感じた。
まるで、ジィと私の心が一つになったかのように。
「行くよ、ジィ!」
ジィが大きく羽ばたき、私たちは空高く舞い上がった。
巨大鯰が、私たちに向かって攻撃を仕掛けてくる。
だが、ジィの素早い動きでそれらをすべて回避。
「あそこだ!」
私は鯰の弱点を直感的に感じ取った。
首の付け根にある、小さな光る点。
「ジィ、あそこを狙って!」
ジィが了解したかのように鳴き、一気に急降下。
その勢いのまま、私は刀を構えた。
「はああああっ!」
刀が鯰の弱点を貫いた瞬間、巨大な光が辺りを包み込んだ。
目が眩んで、しばらく何も見えなかった。
やがて光が収まると、鯰の姿はどこにもなかった。
「や、やった……?」
信じられない気持ちで、自分の手を見つめる。
ジィが優しく地上に降り立ち、私はその背から滑り落ちるように降りた。
「如月!」
駆け寄ってくる部長。
「よくやった。まさか、こんなに早く龍との一体化ができるとは……」
部長が感心したように言う。
だが次の瞬間、激しい頭痛に襲われた。
「うっ……」
「如月!どうした!」
部長が慌てて私を支える。
頭の中で、様々な映像が駆け巡る。
見たこともない景色、知らない人々、そして……部長?
いや、違う。闘護さん?
「な……何なの、これ……」
そう言った瞬間、意識が遠のいていった。
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