第8話 誘ってるわけじゃないよな?
私が手の力を緩めると、部長はベッドに座り直して大きなため息をついた。
「バカなことを聞くが、誘ってるわけじゃないよな?」
「誘うって、何をですか?」
部長が短くまたため息をつく。
「お前やばいな」
「やばい?」
「隙だらけ」
どういうことだろう。
私がわからないでいると、部長が急にこちらに向き直ったかと思うと、私はベッドに押し倒されていた。
部長の顔がすぐ目の前にある。
「こういうことだよ」
部長の顔が迫ってくる。
え、これってーー。
ほとんど唇が触れ合おうとしたその時だった。
「来る」
私が言うのと同時、部長も目を見開き、私の頭を抱きまもる。
直後、地響きと共に建物が大きく揺れた。
「大丈夫。この地震はそれほど大きくない」
部長の言った通り、地震はすぐにおさまった。
「どうしてわかったんですか?」
「体質だ。お前も地震が来ることを当てたな」
「動物的直感みたいなものです」
部長は心配そうに私を見つめる。
「手荒なことして悪かった。俺も酔ってて」
「大丈夫です。それより、一人にされる方が心細いです」
部長が目を開く。
「そうか。そうだよな、あんなことあった後だしな。俺でよければ側にいるよ」
「一緒に寝ませんか?」
「えッ!?」
「ダブルベッドだし、端と端なら十分寝られますよ。私ちょっと寝相はあんまり良くないですけど。これだけ大きなベッドなら大丈夫かと」
「ああ、そういう意味ね。それならお言葉に甘えようかな。隣に寝るのも苦行だけど、腰を伸ばしたい」
「腰、痛いですよね。私マッサージできますよ。部長、横になって」
「えッいやいいよ」
「大丈夫ですよ。私結構うまいんです。ユーチューブで研究して、たまにじいちゃんにやってあげたりしてるんですから」
私は部長を無理やりうつ伏せに寝かせて、腰を揉んでやる。
「本当にうまいな」
部長が気持ち良さそうな声を出す。
「マッサージはちょっと自信あるんで」
「そうか。でも、他の男にはやるなよ。彼氏だけにしとけ」
「彼氏なんていませんよ。絶賛募集中です」
「それなら応募しようかな、俺が」
「え?」
それきり部長から返事がない。
代わりに寝息が聞こえる。
顔を覗き込むと、熟睡モード。
私も眠くなってきて、部長の横で目を瞑った。
あんなに緊張していた部長と隣同士で寝ているって、なんか不思議だ。
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