第7話 俺の理性があるうちに頼む

「なんで」


 この状況が飲み込めない。


 わたしは、部長と出張に来てて、居酒屋で飲んでたはずだ。


「ここはホテルだよ。代行で帰る時、お前が寝て起きないから運んできたんだ」


「えッうそ。すいません」


「しかもお前、予約取れてなかったぞ」


「ええ!?」


「フロントに聞いたら決済に失敗してる記録が残ってたって。2段階認証完了してなかっただろ」


 言われてみれば、予約完了のメールも返ってきてなかった。


 やっちゃった。


「そうかもしれません、本当にすみません」


「まあ一部屋空いてたからよかったよ」


「部長、ベッドに寝てください。運転で疲れているだろうし。わたし、そっちのいすで寝ますから」


「こんなところじゃ寝れないだろ。せめてソファでもあればよかったんだけどな。俺はネカフェでも探すよ。お前が心配だったから起きるまでついてただけだ」


「こんな田舎にネカフェなんかあるんですか?」


「少し探せば一軒くらいあるだろ」


「じゃあわたしが」


 早速マップで調べる。 


「ここから一時間くらいかかりますよ」


「一時間か。それなら車中泊かな」

 

 部長が立ち上がって、無意識に腰を抑える。


 トラックの運転席は快適とは言えなかった。


「じゃあ、おやすみ。明日迎えに来るから」


 そう言って部長はドアに向かおうとする。


その手を私は咄嗟につかんだ。


「待ってください。本当に部長がベッドに寝てください」


「うわっ」


 靴を履こうとしていた部長は私に急に引っ張られたことでバランスを崩し、私にもたれかかってきた。


「わっ」


 私も部長の体重を支えきれずにそのままベッドに倒れ込む。


 部長の開いた胸元が顔面にぶつかる。


「ご、ごめん」


 部長が慌てて身を起こそうとするが、反射的に私は部長の身体をギュッと抱きしめてしまった。


「闘護部長、いい匂い」


「おい。それはやばい」


 私のお腹のあたりで、何か硬いものが動いた。


それはどんどん大きく膨らんでいく。


 部長が、私の頭を撫でる。 


「放してくれ。俺の理性のあるうちに頼む」




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