8章-3.それでも生き続けなければならない 2022.12.25
俺は追手の気配が無いか、周囲に気を配りながら賑わいだした街中に紛れ込む。
どうやら今日はクリスマスという日らしい。昼間から楽し気な音楽が街に流れ、ショッピングを楽しむ家族や恋人、友人同士など様々な人間が溢れていた。どこか全体的に浮かれた様子で、こんな空気感の中にいる事に対して、俺は何となくだが少し寂しさを感じる。もし、少女が居たら何か買ってあげたかった等と想像してしまい、自嘲気味に笑う。
美容室で髪型を変え、顔の印象を大きく変えた。着ていた服も、オーバーサイズのゆったりとしていた服から、体のラインが出るようなビシッとしたものへ変える。眼鏡屋でフチなしの横長の眼鏡を購入した。そして、黒のマフラーで首の後ろの痣を隠した。
これだけでも、だいぶ見た目は変わった事だろう。それでも優秀な追手は見抜いてくる。オーラを変え、気配も変え、歩き方すら変える。もはや生まれ変わるかのように、今までの型を全て変えていくのだ。
こうやって20年間、追手から逃げて来た。もはや特技かもしれない。
あと、今後の俺の課題は仕事だろう。身分を隠しながら金銭を得る事ができる仕事は、それほど多くない。誰も信頼できない中でそれを探すことは本当に難しい。佐藤のアパートに住んでいた頃のような平穏さは当分得られないだろうが、やるしかない。
俺は改めて気合いを入れると、賑わった街の人ごみに紛れていくのだった。
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