終章
エピローグ ????.??.??
「これで、俺と大鎌の少女の話は終わりだ。満足か?」
「うん! 面白かった! 色々秘密だらけでモヤモヤするけど!!」
現在俺は車を運転していた。その車は、高速道路をひたすらに走っていた。助手席に座るのはユミという名の殺し屋の少女だ。歳は17歳だと言っていた。ユミはニコニコと笑い、伸びをしている。
俺たちは西へ行くため、もう何時間も車を走らせていた。あまりにも暇だという事で、何か話をする羽目になったのだった。先にユミが重すぎる話をしてくれたので、次のターンで俺が少女の話をしたという流れだった。
「あの金髪の可愛い子、立派になってましたね! 良かったじゃん! おぢ!」
「お前におぢと呼ばれると複雑だからやめてくれ」
「え? そうかなぁ。あははっ!」
ユミは楽しそうに笑う。実は任務中、俺は金髪の少女に再会したのだ。少女は以前よりも遥かに立派になっていた。その姿を見て泣きそうになったくらいだ。
「金髪の子、そんなに懐いていたんだし、可愛がってたんだから、無理矢理にでも連れて行っちゃえば良かったのにって私思うんですけれど。別に店主とぶつからなくてもって」
「まぁな。それも一つの方法だと。俺も思う。だが……」
ユミが言うように、少女の気持ちなんて無視して問答無用で少女を連れて行ってしまうというのも、悪くない選択だったと思う。それは十分に理解している。
しかし、連れて行った先、少女にとっての良い未来が思い描けなかったという部分があった。自分は常に追われる身だ。何かの拍子に再び追われるリスクはあるし、どこへ行っても堂々とした生活はできない。少女も店主との悪い関係が切れないままになる。
そんな生活は少女にさせたくないと思ったのだ。そこに少女が輝けるような居場所は用意できないと感じたのだ。それに少女は店主としっかりと向き合いたいという意思を見せたのだから、それを尊重したかった。
「あの子を、俺と一緒に追われる身にはさせたくはないな」
「でも、あの子なら一緒に戦ってくれそうですけどね」
「確かにな」
何が正解かなんて分からない。俺は少女の選択を尊重したフリをして責任から逃げただけなのかもしれないなとも思う。
ただ、今回の任務で見た少女は、少女らしく自らの信念を貫く姿勢を見せて戦っていた。少女の考える正しく生きるという姿勢を見た気がする。悪くない結果だとは思ってしまった。
「やっぱり、サムライさんも結構苦労してるんですね。波乱万丈!」
「まぁな。だが、ユミよりはマシだと。俺は思う」
今の俺の呼び名はサムライという。サムライという通り名で積極的に殺し屋の仕事を行って生きている。追手が無くなったわけではないが、逃げるだけの日々は送っていない。この状況に至るまでには色々とあった訳だが、それはまた別の話だ。
また、現在俺が使用する武器は日本刀だ。俺は基本どんな武器でも扱う事ができるが、いつかまた姿を変えて逃げる事になるかもしれないと思うと、やはり人々の印象に残りやすい武器が望ましい。そう考えてこのスタイルとしている。
サムライという通り名はこの武器から安直に決めて名乗ったに過ぎない。どうせ一時的な名だ。適当でいい。
「ねー。まだかかる?」
「半分も辿り着いてないな」
「え゛……。じゃあ次はサムライさんの素性が分かる話をしてくださいよ。10億の謎とか!」
「いや、次はお前の番だろ」
「むむむ」
ユミは不満そうだ。
「次は何か浮いた話でもしてくれ。恋バナとかあるだろ」
「次は恋バナかぁ……。いいですよ。私の青春ラブストーリーそんなに気になります? えへへ。覚悟して聞いてくださいね!」
「覚悟……?」
こうしてまたユミの話を聞きながら、俺達は西を目指した。
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