6章-3.―――――― 2022.12.24

 男たちはそれぞれの武器を持ってこちらへと切り込んできた。流石は殺し屋を名乗るだけはある。動きは洗練されているし連携も取れている。人を殺すことに躊躇もないようだし何より戦闘に慣れているようだ。

 だが、それはこちらも全く同じだった。殺し合いなど腐るほどやってきたのだから、恐れも迷いもない。唯一迷ったものと言えば、少女の気持ちだっただろうか。今も、少女はこいつらを信用しているに違いない。話せば分かると思っているだろう。大事な仲間として認識しているだろう。それを奪う事になるのだから、複雑な気持ちだ。


 俺は男達の攻撃を躱し、軽く切り込む。まだ倒れられては困るのだ。もっと絶望を味わってもらわなければ俺の気がおさまらない。


「お前ら! 3人掛かりなんだから、直ぐに片づけてくれよ!」

「店長! こいつはおかしい! こいつはプロの殺し屋に違いねぇって! それも遥かに格上の――」


 俺は大鎌の柄の方で男を突き飛ばした。腹にクリティカルヒットしたはずだ。当分呼吸もまともに出来ず喋る事は出来ないだろう。余計な事は言わなくていい。店主に逃げられたら面倒だ。


「おい……、その鎌って……」

「ほぉ~ぉ。やっと気が付いてくれたのか! これはあの子の大鎌だよ。やはり本物の大鎌は違う。扱いやすくて良い。俺はこれよりもう少し大きい方がいいんだが、まぁ背に腹は代えられないよな」


 全身に細かい傷がつき、体中から血を垂れ流す殺し屋の男のうちの1人が、ようやく俺の武器に気が付いてくれたようだ。こんなにアピールしているのに、一切触れてこないものだから、見えていないのかと思っていた。


「死神の大鎌なんて、どうして扱えて……」

「確かに。この武器は特殊だから、基本大鎌の一族の人間しかまともに扱えないよな」

「……」

「良い事を教えてやる。俺の恩師はシャレコウベっていう通り名の奴なんだ。今から約20年前、戦闘力を全く持たない俺に、戦い方を叩き込んでくれた人間だ。まさか、恩師が血眼になって探している娘が、俺を殺しに来るとは思わなかった」


 本当に何の因果か分からないが。かつての恩師が今も探し求めている娘、その娘が突然尋ねてきたのだから、本当に人生何があるか分からないと思う。

 父親であるシャレコウベの様に、特異な体質を活かして殺し屋として問題なく生きているのであれば放っておく気でいたのだが、どうにも様子がおかしくて首を突っ込んでしまったのが運の尽きだった。結果としてではあるが、恩師には恩返しができると思えば良いかという気持ちになる。


 俺はニヤリと笑った。そろそろ、終わりにすべきだろう。俺は再び大鎌にこびりついた血肉を遠心力で振り払うと、一気に切り込んだ。

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