5章-6.嘘をついたならば永遠に真実を話してはいけない 2022.12.24

「おーい。店主。死神はいつまで地下に入れておくつもり? 結構暴れて厄介なんだけど」


 遠くの方で別の男の声が聞こえてきた。


「暴れている……? こんなことは今までに無かった。今回は少し様子が違うな……。まぁいい。男を殺した後もしばらくは入れておいてくれ。男はその場所にいなかったことにして、嘘をついたとペナルティを与えるつもりだ。また地下に監禁しておけば、衰弱もするだろうし一石二鳥だ」

「へい!」

「準備が終わったら作戦会議と山分けの話するから、終わり次第集まってくれよ」

「へーい!」

 

 しばらく待っていると、準備を終えた男達が再び集まってきた。ちらりと様子を見たが、男たちの手にはナイフや銃類、鉈などが見えた。


「まずお前らが気になっている山分けだが……。お前らの意見を聞いてやるよ」

「はい! 店主が5で他が1で!」

「随分謙虚だがいいのか?」

「当然っすよ! 見つける事が最も難しいんすからねぇ。大規模組織に20年間も追われ続けていた人間でしょう? それを見つけちまうなんて」

「他の奴はいいのか?」

「人間1人殺しただけで1億もらえるなら十分さ。店主には恩も売っておきたいし。ていうか、死神にはいいのか?」

「あぁ、あいつには報酬なんて必要ない」

「なんか、ランクアップがどうのこうの言っていた気もするけどそっちもいいのか?」

「そもそも、店所属のプレイヤー登録もしていないしこの店自体が届け出ていないんだから、ランクアップも糞もない。ただ、あいつのやる気を上げるための嘘だ。どうせ成功なんてするはずないと思っていたからな! 失敗させて自信を無くさせることが目的ではあったんだが……。まさか本当に見つけてくるとは驚いたもんだよ」

「成程……?」

「よし、他にはないな。なら10億の山分けは今言った通りで行こう」


 男たちは本当に嬉しそうにしている。10億を手に入れた未来を思い描いているのだろう。そのアホ面を、ぐちゃぐちゃに歪むほど殴りたい気持ちでいっぱいだ。

 

 やはり少女が言っていたランクアップの話など嘘だったのだ。店主はありもしない報酬を約束し、少女に無理のある任務をやらせていたのだろう。

 そして、わざと少女に失敗させて、お前はダメだなどと吹き込んで自信を無くさせて洗脳する。そういう事なのだろうと察した。

 

 本当にどこまでも糞だ。俺は体内に渦巻く黒い感情をそのままに、ゆっくりと立ち上がった。

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