5章-5.真実は埋もれさせてはいけない 2022.12.24
「いやぁ、本当にいい拾い物だった。まぁ、子育ては大変ではあったがな。はっはっは!」
「何言ってんすか。大して何もしてないくせに。殆ど放置だったのに、よく生きてたなって俺らは皆思ってますよ」
「やっぱりそれはあれだろう。元の造りが頑丈だからな。放っておいても生きていけるんだよ。ああいう人種は。むしろ普通に育てたら強くなりすぎて制御できなくなるからな。加減が大事だったんだ」
「加減って……、虐待のっすか?」
「はっはっは! 人聞きが悪い事を言うなよぉ」
胸糞悪い会話だ。子供が酷い目に合う話など聞きたくもないし見たくもない。本当に死んでいてもおかしくないような扱いを少女は今まで受けてきたのだろう。
俺は怒りを抑えつつも、ひたすら隠密を続ける。正直聞きたくはない。しかし一方で、首を突っ込んだ以上は全て聞かなければならないと感じている。
この真実を少女に伝える日は来ないだろうが、事実がうやむやになって誰も知らないままとなるのは良くない。せめて俺がこの事実をはっきりと覚えておくべきだ。ここで一体何が行われていたのかを知らなければならない。
「とはいえ、一ヶ月近く見ない間にあのガキ、すっかり健康体になってしまった。これでは制御が効かなくなって困るんだがな」
「確かに、身のこなしが格段に上がってましたね。やはり元々のポテンシャルが高いからっすかね?」
「恐らくな。だが……、あの健康体を見ると後数年待てば随分いい女になるとも思わないか?」
「成程……?」
「元々顔は綺麗なんだ。ガリガリの汚いガキだったから全くそんな気は起きなかったが……。5年もすればかなり良くなるはずだ」
「うわぁ、店主。それ、流石の俺も引きますよ?」
「じゃぁ、お前は関わるなよ?」
「なっ!? それは違くねっすか?」
「はっはっは! それにゆくゆくは、死神に子供を生ませればいいと考えている。大鎌の一族の人間を多数手に入れたらどうなると思う?」
「成程……?」
「大鎌の一族の特性は遺伝する。その子供達とも契約が結べて主と認められれば、強大な力を手に入れる事ができるって話だ」
「へぇ。夢が膨らむっすね」
「はっはっは! リスクを冒して死神を手に入れたのは、本当にいい選択だった!」
一体何が面白いんだか。俺はボーっと天井を見上げる。今すぐにでも奴らを殺してしまいたい気持ちになるが、今はダメだ。まだ足りない。恐らくこれから店主達はもっと情報を吐くはずだ。
今奴らは、10億が手に入ると浮かれている。こういう時の人間は、口が軽くなり饒舌になる。俺は精神を落ち着け再び聞き耳を立てた。
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