第3話姫様(ひいさま)と長(おさ)
白い部屋は朝日が散乱し光は寝不足の目を痛いほど刺す。鳥が鳴きだし、朝が来た。
朝餉の声が掛かり、呼ばれて通されたただっ広い部屋の、奥に御簾が下され中から簪が擦れる音。
「待たせたな、ニチカ、カスガ。」
姫様の声。2人が下座に着くとすぐに仕えるものたちがそれを合図に、室内へは湯気がたった料理が運ばれる。
何人もの女達が4人分にしては沢山な、料理を配る中。
話は後だと長が2人に囁く。
耳目が有りすぎるからと。
和やかな雰囲気にしようとか、この住まいから出られない姫様が、ニチカやカスガに外はどうかなどと尋ねてこられるのをお答えしながら、食事はつつが無く。
しかし、肝心話はせぬまま、箸を置く。
水菓子をと運ばれて来た物は。
食べたことのない、果物。
「これは桃と言う。まさかの今、時期物だ。厄除けに良い、らしい。」
ある国じゃ、厄除けの神様だそうだと言いつつ、御簾向こうで姫様。食べて見よと勧められたニチカも齧る。がみずみずしいゆえに。
「あー、汁がっ、ご、ごめんなさい」
「気にするな、はじめてか?よいよい、拭かせる、誰か!」
直ぐに布巾を手にした人に汚した服、手、床を拭かれるニチカを、気にするなと長や姫様が笑うのだが、恥ずかしく。
それを見たカスガは慎重に皿に汁を受けながら食べて瞳を見開く。
「初めて口にました。」
そうだな、カスガもまだ若いからなあ。
と髭を扱きながら長は。
微かに、直ぐ隣にいたカスガにだけ聞こえる声て。嘆息した。
食べずに済む、のが一番よいのだが。
長の言葉の意味を聞こうとしたが。間が悪く
姫様が口を開く。
「部屋の準備ができたようだ。さあ、行こう。それとも、もう一個食うか?ニチカ?」
「十分いただきました、もう結構です」
「ははは、遠慮は、要らないしこうやってのんびり食事をしたり物があり施せるのも、今だけかもしれないのだが、良いなら良い」
参るぞと言う、姫様に続き。
また別の部屋へ向かう。
その道中。少しずつ姫様の御付きの人が減り、減り、最後の人を部屋入り口、外に残し。とうとう、部屋は4人きり。
「ようこそ、我が部屋へ。悪いがもう一部屋、隣へ行くからついて参れ」
案内された、屋敷の最奥。
立派な集落の祭りの時とは比べ物にならない、大きく立派な祭壇がある。
まずは神に頭を下げて手を合わせくれと言う姫様に合わせ拝してから。
その室内の敷物の上へ。
「何ぶん、人払いが難しいので本来ここには誰も入れないのだ、椅子がないがすまないな」
と言う姫様は。
初めて顔を覆う布をめくり、ニチカとカスガに笑いかけた。
長がそれは、と止めに入るが。
良いのだと押し切るその素顔は美しく、本来なら長と同い年だと言うには若過ぎて、また肌が白過ぎて。
人とは別の生き物のように見えた。
「役目でこの敷地すら出られず不自由は多い。またこの顔は身近な人にすら隠さねばならんしつまらんばかりだ、これくらいの茶目っ気は許せ、シドウ長どの」
「姫様......年齢が?」
親子ほどの年の差見える2人だが。
「なんの恩恵かが体の歳を止めているがしかし、人には気味悪いだろう。とは言え、話が話。顔隠すなど失礼だろ。さあ、我が身に起きた話をしよう
——私の生活は毎日何十年内容も、食も、側使え達もほぼ変わらない。
神に祈るが仕事故に、出来ない事が多くまた、決められたする事も多くある。地を守るために昨日も、日の出前からの朝のお勤めをし、飯を食い、昼も夜も同じ事をして、翌朝に備え外の皆より早々眠りにつくのだが。
1人になると体を見る視線を感じ、周りを探るも人の隠れ居る場所はない。
大概守り人がいて、使用人がいて、御付きがいて、と言うのがふだんだが、流石に寝る時などは1人、部屋の外に人を置き、1人籠る。
そんな、時を狙ったように、どうどうとじろじろと見る無礼な何者か。
そんな奴ここにはおらん。
探り合い、そして氣付かれまい見たのだが、国外、他国の民と思われる男と、がっぷり目があってしまった。
向こうに、こちらが氣づいた事を知らせ、力に押し負けた私の頭を少し覗かせてしまった。覗き来るを止めたのだが、自信満々にして嫌な笑みを浮かべた、その顔に不吉な予感がした。
正確には果たしていつから何処まで私やこの地を見て此方のことを知らせてしまったか、分からない。
ともかく相手の覗き穴を封じた反動で倒れ。その音に人が駆けつけ。夜中にもか変わらず直ぐに皆が集う事になり。
私が休む間、駆けつけた長殿は、すぐさま国や、地方、集落内は勿論だが、また集落外へ居る使い手たちに結界や守りを固め直すよう使いを出し。今、ニチカ、カスガ、2人と今顔を見て話を出来ていると言う訳だ。
我が身体本調子には見えまい。
だが、事態は急ぎだ。
さて、今度は2人の話を聴かせて貰おうか。」
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